長期保存ができないLNGの難点

二つ目の問題点は、LNGそれ自体の特性にある。

不足が判明してから実際に調達できるまでのリードタイムが長いことだ。これは昨冬にまさに問題となった論点であるが、LNGは基本的に産地との長期契約が主であり、スポット調達でも届くのに2カ月程度かかる。そのためLNGの需要増が発生したとしても、LNGのサプライチェーンは需給の急変に対応しきれないのだ。

LNGは貯蔵に向かないという欠点がある。日本は島国であるためLNGを冷却・液化して船舶で調達するほかない。LNGはタンクで貯蔵する。しかしLNGは徐々に気化してしまう欠点があり、石炭や石炭と比べて長期保存に向かない。

さらに地域的な特性が加わる。今回、燃料制約で対応せざるを得なかった4電力のうち、北陸電力、四国電力はLNGタンクを1基しか持っていない。LNGそのものに貯蔵の難点があるとはいえ、貯蔵のキャパシティーが低い電力会社が存在をするのだ。

特に四国電力は、漁業・潮との関係で、追加調達が月に2回程度しか受け入れ日を設定できないなど制約が多い。柔軟な運用が難しいとの説明が今回の燃料制約への対応の際になされている。

この冬は大丈夫なのか

このように見ると、寒さが一段と増してきた今冬の電力は大丈夫なのだろうか。筆者はあまり楽観視できる状況にないと考えている。

電力供給の余力を示す値に「需要に対する供給余力」(予備率)という数値がある。この数値は8~10%が適正とされ、安定供給の最低目安は3%とされている。つまり、3%台になった時点で黄色信号がともり、3%を下回るといよいよ電力危機が見えてくる。

この冬の電力需給の見通しは実に厳しい。全国7つのエリアでピーク時の需要に対する数値は3%台しかなく、過去10年間でもっとも厳しくなる見込みとなっているのだ。

燃料制約をかけた4電力だけではない。今冬に「10年に1度の厳しい寒さ」が到来した場合、東京電力管内は2022年2月の供給余力で最も厳しい水準に陥る。安定供給の最低目安である3%ギリギリの3.1%となる見込みだ。

2013年1月14日大雪の降る銀座
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今冬は例年に比べ寒くなるとの予想だ。気象庁は11月10日、ラニーニャ現象が発生しているとみられると発表した。ラニーニャ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象のことだ。その場合、日本では冬の寒さが厳しくなることが指摘をされている。

12月に限ってみれば、東京電力管内では12月6日、電力使用率が96%まで上昇。急激な寒さで暖房の使用が増えたことに加え、設備トラブルによる千葉火力発電所(千葉市)の一時停止が重なったことなどが原因として挙げられている。本格的な冬が到来する前に需給が逼迫ひっぱくした点は極めて憂慮すべきことだ。

このほかは安定供給を続けているが、すでに年末から寒波が襲来しており、エネルギー需要は高止まりすることが想定される。危険なのはこれからだろう。