弱いつながりから新鮮な視点を得ることが大事

ルーフの考察は、グラノヴェッターが最初に発見した弱いつながりの強みと一致する。弱いつながりは、就職の機会に通じる新しい情報と同じように、起業のアイデアを生むような新しい視点や発見を多くもたらす。そして、強いつながりに頼った就職活動が、この人だから採用したいと雇用主に思わせることが難しいように、強いつながりに頼る起業家は、ビジネスの差別化を図ることが大きな試練になりがちだ。

「起業家はネットワークを多様化することによって、類似という落とし穴を避けられるだろう」と、ルーフは述べている(※5)

つまり、自分が得る情報を最大限に多様化して最大限の機会を創出するためには、強いつながりの枠を超えて、弱いつながりから新鮮な視点を得ることが必要なのだ。ルーフの研究もそれを裏づけている。

デビッド・バーカス『ビジネスで使えるのは「友達の友達」 「冬眠人脈」の底知れぬ力』(CCCメディアハウス)

一方で、強いつながりは親密さと信頼の絆によって、相手を助けたいという個人的な思いを刺激するかもしれない。しかし、弱いつながりの中にも、新しい情報をもたらすだけでなく、より強い共感を相手に示す関係がある。以前は強いつながりだったが、今は弱くなったつながりだ。グラノヴェッターの就職活動に関する調査でも、昔の仕事仲間や長く連絡を取っていなかった旧友が、強いつながりと同じように、個人的に相手を助けたいと思うケースがあった。

「偶然の再会や共通の友人が、昔の強いつながりを復活させた。存在さえ忘れていた人から、最も重要な情報を得るときもある(※6)」と、グラノヴェッターは書いている。

※5.Ruef, “Strong Ties, Weak Ties, and Islands,” 445.
※6.Granovetter, “The Strength of Weak Ties”, American Journal of Sociology Vol.78, No.6(1973):1372

関連記事
「強調したい箇所を赤色にすると逆効果」プレゼン資料で相手の目を引く"意外な色"
「アメリカ最高のCEOはアマゾン創業者である」伝説の投資家バフェットはなぜそう断言したのか
「出勤は出張扱い」参天製薬がコロナ後も"会社に来ても来なくてもいい"を貫くワケ
30代初めに「声がかかって」ふらっと転職した人に後悔が多い本当の理由
「上が言っていることだから」を連発する上司を一発で黙らせる部下の"すごい質問"