お客さんは「宝探し」感覚で楽しんでいた

全品半額以下ではなかったものの、その安さから口コミで伝えようとする客がいた。その場で携帯電話を使って情報を伝えようと、「ここなんていうお店でしたっけ?」と聞かれるも、店の名前はまだなかった。また、「この店は何時までですか?」という問いには、「暗くなるまでです」と答えた。倉庫には電気も引かれていなかったからだ。

提供=ガットリベロ
営業時間は「暗くなるまで」。店には電気も通っていなかったからだ。

「夕方になると倉庫の中が暗く商品や値札が見えなくなる。携帯のライトを光らせながら探されているお客さんを見た時、宝探しのような感覚で楽しまれているとお見受けした。今はどの店もきれいなのが当たり前ですが、昔ながらのガチャガチャした商店街のようなお店に行くのも買い物の楽しさではないかなと思ったのです」

今やグループで国内594店舗、海外91店舗に成長したパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(ドン・キホーテ)も、最初は「泥棒市場」という名の小さな店舗からスタートし、隙間なく商品が並べられる圧縮陳列が、宝探し的な楽しさを提供していた。

店名もないにもかかわらず、口コミで客は増えていった。「オムツが安いんよ」「洗剤が安いんよ」と、その場から電話をして情報が広がっていく。関西の人に特有の、安く買えることがうれしいし、それを人に伝えたくなる性格も大きいのかもしれない。常設の店舗として行けるという手応えをつかんだため、1カ月後には電気や電話が引かれ、「222」としてオープンする。

店名の数字「2」には、3つの思いが込められている。ひとつ目は、本来なら廃棄されてしまうものをリユース、リサイクルとしてよみがえらせる(2回目)。2つ目は、地球環境にやさしく平和になる(ピースの2)。3つ目は、その結果みんなが笑顔になる(ニコ)。

「老若男女、外国の方にもわかってもらえることも数字にした理由です。最初からトリプルツーと呼んでくれる人は少ないですが、頭の中に2という数字を覚えてもらえればうれしいです」

知名度アップを狙った新宿出店

現在関東圏には、新宿店と川崎港町店の2店舗を構える。

「どうせ東京に行くなら目立つ場所に出店して認知度を上げようと考えました。関西だけでやっていた時は、東京の放送局の方はなかなか本社の滋賀には来ていただけなかった。取材のしやすさという意味でも新宿に決めました」

222はロードサイドやモールの中への出店を基本にしているが、新宿店は新宿東口から間近の好立地ではあるものの、ビルの3階4階にある。

「不利な立地なのは事実です。従来の店舗は車で来客されるので、安いから取りあえず買っておこうと思ってもらえますが、新宿は電車で来られる方が多く、買ってもいいけど邪魔になってしまう。そこが思った以上に難しい」

さらには、コロナ禍で外国人のインバウンド需要が消滅したのも大きい。ただし、関東進出の第1号店として、店舗の知名度や信頼度を高める目的は果たしているという。