第一線ではないから成し遂げられる仕事もある

もう一つは、仕事そのもので足跡を残すということです。

少々前の事例で恐縮なのですが、部品会社に勤めるWさんの話をご紹介したいと思います。

大塚寿『50歳からは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)

その会社は長年自動車部品を作ってきたのですが、売上的にはじり貧でした。一方、当時は電気自動車(EV)の黎明期で、これから市場が拡大することが予想されていました。

しかし、ガソリン自動車とEVでは、販路が違います。現役世代は現在の顧客の維持に精いっぱいの状況。そこでWさんは、自分がこのEV関連の取引先を開拓することを「ビジネス人生の総仕上げ」とすることにしたのです。

そして実際、その道筋をつけたうえで、Wさんは定年退職。現在ではこの会社のEV事業は大きな柱に育っているそうです。

このように第一線ではないからこそ、成し遂げられる仕事もあるはずです。

「集大成」があったからこそ、定年後が輝く

もう一つ事例を紹介しましょう。

地方市役所の住民課にて、課長として50代を迎えたKさんが注力したのは「民間への窓口業務委託」でした。

民間への窓口業務委託はその必要性が叫ばれているとはいえ、法律で制限がされていることに加え、個人情報の取り扱いなどもあり、実際にはそう簡単な話ではないというのが現実です。だからこそ、Kさんはこれを公務員としての集大成と位置づけて尽力し、見事に成し遂げました。

Kさんは定年後、大学での就職担当者として新たなキャリアをスタートさせましたが、この経験を学生に話すことで学生を勇気づけているそうです。50代の集大成がその後の人生にも役立つことがわかる好例だと思います。

会社に貢献し、かつ、自分の人生にも大いに意味を持つ「集大成」はどんなことか。ぜひ、考えてみてください。

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