「万が一の際」に稼働する自動運転技術
たとえば世界初のレベル3技術を実装し2021年に発売されたHonda「レジェンド」は、稼働速度域(上限50km/h)や運行設計領域(ODD)に限定条件がつくものの、それらがクリアされれば時間や距離に上限はない。
個人的には一般道路におけるEDSSに対して、「極めて限られたODD(先の60秒かつ150m)での自動運転」という拡大解釈ができるので、「ミニマルなレベル4」ではないかと考えているが、そのようなレベルは存在しない。ちなみに、ここでの「ミニマル」とは絶対的な最小限を意味し、枠組み内での最小限を意味する「ミニマム」とは異なる。
こうした諸事情を勘案してわかるようにMAZDA CO-PILOT CONCEPT1.0や同2.0を含むEDSSは、「緊急時に安全な場所まで、自律型の自動走行に徹して停車させる」技術であり、自動運転そのものとは活用の仕方や目的が違うとするのが正しい。
改めて、自動化レベルの定義に則った自動運転が「ドライバーが率先して使う自動運転技術」であるならば、EDSSであり、MAZDA CO-PILOT CONCEPTが目指している姿は「万が一の際に自律的に稼働する自動運転技術」だと言い切れる。
「無意識の異変」を捉える技術の研究も進めている
車両の制御技術に加えて、MAZDA CO-PILOT CONCEPTを含むEDSSを正しく機能させる上で大切なことがもうひとつある。それは、ドライバーの異常を正しくシステムが検知することだ。
MAZDA CO-PILOT CONCEPT1.0では、市販車でありマツダが第7世代商品群と称するマツダ3以降のモデルに車載されているドライバーモニタリングカメラを使い、ソフトウェアでの解析技術を高めながらドライバーの姿勢崩れを検知する。そして、同時にステアリング操作の有無も把握しながら異常な状態を診断し、確実な制御へとつなげていく。これをマツダでは「ドライバー状態検知技術/異常検知」と位置づけた。
これがMAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0になると、1.0でのセンシング手法に加えて、この先、訪れるであろう、ドライバーとして意識することがない危険までも検知する。こちらは「ドライバー状態検知技術/異常予兆」と呼ぶ。
具体的には、無意識下で徐々に進行する脳機能の異変や低下(=危険な状態)をマツダ独自のアルゴリズムで“予兆”として捉え、危険な状態に近づこうとする前段階でドライバーに報知し、自動停車機能とも連携を図るという。
マツダでは2.0における異常予兆の確立に向け、より高い精度でのドライバー状態把握を目指し、サリエンシーマップ(≒人が引き寄せられやすい箇所を示したマップ)なるものを広島大学と共同で研究。そこでは健常者と、脳疾患をもつ患者とでは、視線挙動に違いがあったり、偏りがあったりすることを発見し、この先の開発に活かしていく。
将来的には、前は向いているもののボーッとしてしまうことで発生する“うっかり事故”や、統計データ上、高齢ドライバーに多い“認知症特有の運転傾向”の把握が正確に行えるようになる。