ドライバーに体調急変が起きた時、事故を防止する方法はあるのか。マツダは一般道路での発動を想定した高度運転支援技術「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」を発表した。試乗を体験した交通コメンテーターの西村直人さんは「車両制御はベテランドライバーのように正確で、音声ガイドは同乗者に安心感を与えてくれた」という——。
MAZDA CO-PILOT CONCEPT 2.0の技術コンセプトを搭載した実験車両(マツダ3)
画像=マツダ
MAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0の技術コンセプトを搭載した実験車両(マツダ3)

ドライバーの体調急変による交通事故は年間300件ほど

国土交通省によると、運転しているドライバーの体調急変が原因で発生した交通事故は年間300件ほどあるという。乗用車はもとより、乗車定員の多い大型観光バスや車両総重量25tにも及ぶ大型トラックの場合、ひとたび事故がおきれば被害は甚大になる。

こうした状況を受け、国土交通省は2016年3月に「ドライバー異常時対応システムのガイドライン」(EDSS/Emergency Driving Stop System)を策定した。対象車種は二輪車を除くすべての自動車だ。

ガイドライン策定の目的は技術の普及促進にある。EDSSにより、冒頭に述べた体調が急変したドライバーが運転する車両を、ドライバー、もしくは同乗者がボタン操作したり、システムが自律的に異常を検知したりして、自動的にブレーキ制御を働かせ停止させることができる。言い換えれば、EDSSは交通社会の課題を克服するための技術だ。

すでに日本の乗用車メーカーでは、いくつかの車両にこのガイドラインに準じたEDSSを実装している。車両の制御内容は実装した時期により異なるが、車線を維持し走行していた車線内で自動停止する「車線内停止方式」や、自動で車線変更を行って路肩に自動停止する「路肩等退避方式」が実用化されている。

一般道路も視野に入れた「MAZDA CO-PILOT」

ただし、日本車が備える現在のEDSSは、取扱説明書にも記載があるように前走車追従機能や車線中央維持機能といった運転支援技術をドライバーの意思で働かせていることが発動条件のひとつになる。

また、前述の運転支援技術は、現時点で高速道路や自動車専用道路など歩行者や自転車がいない道路での使用を国として推奨している(法で禁止はしていない)。こうした諸事情から、日本車のEDSSは現在、一般道路での発動に100%沿うような設計がなされていない。

マツダが新たに発表した「MAZDA CO-PILOT CONCEPT1.0」と「MAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0」は、EDSSである国のガイドラインをベースに設計された高度運転支援技術であり、当初から一般道路での発動も視野に設計がなされている。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT1.0は2022年に発売される新型車(ラージ商品群)から導入される確定技術であり、2.0は2025年以降の実用化を目指した現時点における技術コンセプトだ。

このうち今回はMAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0の技術コンセプトを搭載した実験車両(マツダ3)に公道(一般道路)で同乗試乗を行った。安全確保の観点から、運転操作はマツダの開発技術者が担当し、筆者は後席で発動の様子を確認した。