細やかな音声案内が安心感を与えてくれる
自動停車機能が発動するとすぐに、「ドライバー異常のため安全な所まで自動で走行し停車します」と、仮想ドライバーであるシステム(MAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0)が運転操作を担ったことが伝えられる。
この発話を聞いて同乗試乗をしていた筆者は、体調急変によってドライバーによる運転操作ができなくなるという、ドライバー不在による焦りを感じることなくスッと落ち着けた。
さらに「左に車線変更します」「停車します」と、MAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0が行う車両制御の数秒前に都度音声で告知され、停車した後も、「停車しました。ヘルプネットに接続します。車外に出るときは周囲の安全を十分確認してください」と、ドライバーの救護策(ヘルプネット)と、同乗者への配慮(車外に出る際の注意喚起)の両方を伝達してくれるので安心感も抱けた。
もっとも、現時点でシステムが対応できるシーンは限られることから擬人化や過信は禁物であるし、通信技術を使ったヘルプネットはオペレーターとの会話が期待できるが車両の所在地によっては回線が安定しなかったり、救護の手である救急車などが到着するまでに時間を要したりすることも想定される。
しかし、MAZDA CO-PILOT CONCEPTのようなEDSSには冒頭に述べたように年間300件ほど発生している事故の被害を大幅に軽減、もしくは二次被害をゼロにできる可能性がある。有用性はやはり高い。
「自動運転である」とは言い切れない事情
ところで、このMAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0が一般道路で披露した車両制御は、人の運転操作をまったく求めない。というより、人が運転操作できない状況になっているからこそ発動される自動停車機能である。
ならば、MAZDA CO-PILOT CONCEPT2.0の車両制御は果たして「自動運転」なのか。車載センサーにはじまりアクセル/ブレーキ/ステアリングの各操作に関しては、用いるアクチュエーターや制御モーターなどは自動運転(レベル3以上)の要素技術だし、高精度HDマップの活用方法にしても違いはない。細かく見れば、それぞれを司るECUの設計要件に至るまで自動運転が求めるそれと同一である。
そのことから「自動運転である」と結論づけたくもなる。なにより同乗試乗した筆者が、「これは自動運転ではないか」と感じたくらいだ。しかし、実際にはそう言い切れない複雑な事情が関係する。
現時点、一般道路におけるEDSSは作動時間の上限を60秒、制御可能な走行距離の上限を150mと国土交通省が定めている。150mは警察庁が定めた「一般道路において隣接する信号機との距離(交差点と次の交差点の停止線間の距離)」から算出された値だ。
したがって、こうした国土交通省の規定があることから、SAE(米国自動車技術者協会)の自動化レベル定義(レベル0~5の6段階)からするとピタリと当てはまる自動化レベルが存在しないのだ。