子どもに幸せな性格を授ける

ここからは慶應義塾大学の前野隆司教授と子どもに幸せな性格を授けることについてお話します。

【前野】なるほど。日本では「みんな仲良く」となりがちですね。

【平本】そうすると、表面的にはポジティブだけど、実際はただガマンしているだけで、腹の中ではネガティブな感情がうごめくようになるかもしれません。「どうしてあの人の意見だけ優先されるの?」「あの子と同じ扱いは信じられない」なんていうことが起こりやすくなってしまう。

【前野】その可能性はありますね。アメリカの教育では「みんなと仲良くしなくていいから、みんなとの違いを理解しなさい」と教えると聞いたことがあります。

【平本】自立と協力の感覚がないまま10歳までを過ごすと、大人になっても「誰かに言われないとやらない」とか、「可能な限り独占したほうが得だ」といった性格(ライフスタイル)を持ち続けることになりかねないと思います。もちろん大人になってからでも、「勇気づけ」の技法などを使いながら、性格(ライフスタイル)を変えることはできるのですが、一方で、このような心理学の理論を知らないままだと、無自覚なガマンのせいで、協力的な行動に移せないということがビジネスの現場でも多々見られます。

【前野】本来の利他主義の例は、仏教用語で言う自利利他円満だなあと思いました。自分の利益と利他が、円満にバランスしている状態です。利己か利他かを分けないところが、アドラーは東洋的だなと感じます。バランスの良い答えに行き着くんですね。面白い。

【平本】自立と協力が大切だという人は大勢います。でも具体的にどうしたらいいかはなかなかわからない。そこを100年間探究したのが、アドラー心理学なんです。

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