若者向けに作られる日本のドラマに対する不満

日本で紹介された初期の韓国ドラマにおいて、女性は恋愛ドラマ、男性は時代劇に特化していったのは、筆者と同世代にとって見るべきドラマがなくなった、日本のテレビ番組に対する不満をよく表している。2017年になって、倉本聰が「やすらぎの郷」を書いたのは、その揺り戻しと捉えるべきだろう。

その後も依然として、日本のドラマは若者向けに作られる傾向が強くなり、定年を迎えた筆者の世代はますます韓国ドラマに傾倒していく二極状態が続いていた。当の韓国にしても、いつまでも「冬のソナタ」「宮廷女官 チャングムの誓い」のようなドラマばかり作り続けていたわけではない。

2010年代に入ると、日本でも韓国ドラマを見る視聴者層は必ずしもシニア世代だけではなくなった。若い世代にも訴求する、傑出した韓国ドラマが数多く登場し、K―POPの隆盛もあり、韓国エンタメは日本中を席巻する一大現象となる。

ケーブル局放送の登場が「韓国ドラマ」の質を変えた

2000年代以降の韓国ドラマ史上、最大の変化は、何といっても2006年からのケーブル放送局「tvN」の開局、2011年からのCJENM経営による有料ケーブル局「OCN」のテレビドラマ製作開始、同年の韓国の新聞社4社(中央日報、朝鮮日報、東亜日報、毎日経済新聞)による総合編成チャンネル(同順に、JTBC、TV朝鮮、チャンネルA、MBN)の開局である。

これによって、今まで地上波独占だったKBS、SBS、MBC以外の局からのドラマ製作が可能になった。

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2010年代の話題番組は、ほとんど地上波以外のケーブル局によるもので、特に、総合編成チャンネルのJTBC、専門ケーブル局のtvN、OCNの3局が間違いなく台風の目である。同時期の地上波ドラマは明らかに後手に回ってしまい、意欲的な番組はすべてこの3局から発生したといっていい。

日本における韓国ドラマブームは、俳優が話題の中心となった「冬のソナタ」出現の2003~10年を第1次とすると、2011~15年の第2次はシナリオ・発想・シノプシス・プロットの充実期であり、2016年から始まった第3次ブームは、K―POP人気に加えて、前出のケーブル3局の躍進が加わり、これによって「韓国ドラマ」のクオリティはアメリカ・ドラマに匹敵するほどの水準にまで引き上げられた。