なぜ韓国ドラマは世界中でヒットしているのか。『人生を変えた韓国ドラマ 2016~2021』(光文社新書)を書いた藤脇邦夫さんは「韓国には、2006年以降、次々と誕生したケーブル局が従来とは異なる意欲的な作品を作ってきた土台がある。スポンサーに配慮したドラマばかり作る日本とは企画力で大きな差がある」という――。
「ドラマロス」状態の日本の視聴者に刺さった「冬のソナタ」
日韓ワールドカップに沸く2002年、最後の家族テレビドラマといわれる「北の国から」のスペシャル版「2002遺言」が終わった後、日本のテレビ視聴者は一種の「ロス」状態に陥った。
筆者も1980年代からのトレンディ・ドラマにはそれなりに夢中になった世代だったが、同時期の「ふぞろいの林檎たち」(1983~97年 TBS)が終わった頃から、筆者と同世代を対象にしたドラマはほとんど作られなくなった。少し上の団塊の世代にとってはなおさらだっただろう。
従来であれば、その頃からNHK大河ドラマ辺りに移っていくのだろうが、ロック世代でもある筆者としてはまだそこまで老け込む年代ではなく、映画DVDやアメリカテレビドラマ「24‐TWENTY FOUR‐」(シーズン1 2001~02年 FOX/日本放送 2004年 フジテレビ)等のレンタル視聴に移行していた。
そんな頃、アメリカテレビドラマ(以下、アメリカ・ドラマと略)の日本上陸と同時期、もう一つの未知の世界のドラマが、視聴者の心の片隅に寄り添って忍び込むようにさりげなく日本に紹介された。いうまでもなく、韓国ドラマ「冬のソナタ」(韓国KBS 2002年/日本放送 2003年 NHK―BS)である。
今振り返っても、「北の国から」の終了直後に、韓国ドラマが日本に紹介されたのは、ほとんど象徴的といっていい。
歴史は後から考えるとまるで作られたかのようにうまくできているというが、それからほぼ20年、韓国ドラマはレンタルショップの定番商品となり、BSテレビ放送の毎日視聴できる番組の一つとして、NHKテレビ小説より身近な映像として定着した。我々の生活の中に不可欠な存在となったわけだ。