今世紀中に日本が韓国ドラマに追いつくことは不可能

そして、2019~21年の第4次ともいえるブームは、まさに第3次以降の成熟による一大ルネッサンス期──黄金期であり、後述する「愛の不時着」「梨泰院クラス」「賢い医師生活」といった秀作を続々と生み出した。

現在、世界の映像ソフトの中で、テレビドラマ(ネット動画配信全盛の今、実はこの定義さえ怪しくなっているのだが、とりあえずテレビによる放送、及びモニターで視聴するために製作された映像の総意)に限っていうならば、最高峰は、アメリカ・ドラマと韓国ドラマといって差し支えない。

この点だけでも、広義の映像(テレビドラマ・映画)のジャンルにおいて──日本最強の映像ソフトである「アニメ」を唯一の例外として──、21世紀中に、日本が韓国に追い付くことは、もはや不可能といっていい。

韓国ドラマが日本のドラマよりずいぶん先を歩いていることは誰の眼にも明らかな事実であり、この距離感を埋めることは、これから先もおそらく無理だと思われる。

ネット配信の成否を左右するのはドラマ映像

前作『定年後の韓国ドラマ』(2016年 幻冬舎新書)を刊行して5年になるが、その間の最大の変化ともいえる、第4次ブーム到来の理由として、次の2点が挙げられる。

一つ目は先述したケーブル局と映像配信による、視聴環境の大幅な転換である。特に、tvN、JTBC、OCN等を始めとするケーブル放送局製作ドラマの一部をネット動画配信の最大手Netflixに配信委託したことにより、韓国ドラマの特異性を否応なく、日本も含めて、全世界の国、地域に強烈にアピールすることとなった。

タブレットを操作する女性
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1963年のケネディ暗殺を告げる日米初の衛星同時中継、衛星放送の時代は彼方に去り、実質的に、現在世界の放送事業業態の趨勢すうせいは、電波事業から、インターネットを中心とした通信・配信事業に移行しつつある(民放テレビ局がネット事業者と手を組まないのは、認可業種である放送業の既得権益を守るためであることは業界の常識だが──テレビ放送と同時のネット配信は年内に一部の民放が予定している──、5年、10年先の状況はもうわからない)。

その最も顕著な象徴として、例えばNetflixは2020年に全世界の契約者数が2億人を突破した。配信アイテムの一つとなった韓国ドラマは「愛の不時着」を筆頭に、190カ国で視聴可能な最強の映像ソフトの地位を手に入れたわけで、ネット配信の効用と意義は大いにあったことになる。

テレビ放送であろうと、ネット配信であろうと、その成否を左右するのはドラマ映像というソフト・コンテンツに他ならない。