銀行が「地域の人材供給バンク」になる必要がある

また、限られた予算内で、デジタル人材の採用にあてる高額な人件費を捻出するためにも、銀行の余剰人員に転職を促す仕組みが必要となる。転職・起業独立・キャリア支援に加え、銀行による人材紹介業が解禁されたことで、銀行員に地元企業などへの転職を促す「地域の人材供給バンク」となることも必要となってくる。

銀行による人材紹介業が2018年に解禁され、横浜銀行、広島銀行など多数の地銀が参入している。その多くは、リクルートやパソナなど大手の人材紹介会社と提携し、後継者や人材不足で困っている地銀の取引先企業を、業務提携したリクルートやパソナに繫ぎ、彼らの人材登録リストから最適な人材を紹介する。そして、成約した場合には、地銀は、紹介手数料を受け取るという形になる。

もっとも、この形だと「なぜ、わざわざ地銀を経由する必要があるのか」という疑問が浮かぶ。当然、ダイレクトに大手人材紹介会社に依頼したほうが、早くてシンプルだ。メインバンクである地銀には知られたくない、という取引先も多いからである。

多くの地銀は勘違いをしているが、地銀による人材紹介業務の本丸は、銀行員を人材登録し、地元の取引先などに供給することにある。

若手行員から脂の乗った中間管理職や幹部行員を、幹部候補、管理職、財務・経理職、金融・不動産営業職、経営コンサルタントといった形で、後継者不足や人材不足に悩む地元の中小企業や新興企業などに紹介するのだ。

地域の労働流動性を生み出すことが地方創生だ

この結果、地銀は、適正人員を実現できるだけでなく、人件費の圧縮と人材紹介手数料の収入を得ることもできる。人材不足に悩む地元の企業にとっても問題解決になる。もちろん、当の行員本人にとっても悪い話ではないはずだ。地域社会全体での適材適所の実現といった効果も期待できよう。

「企業はいま、モノやカネではなくヒトを求めている」という環境からも、地銀がその豊富な人材を派遣して、人手不足に悩む地元中小企業への「地域の人材供給バンク」となれるだろう。

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後継者不足や財務などの専門家不足に悩む地元企業、介護職不足に悩む地元社会への人材供給による地域の労働流動性を生み出すことこそ、いま地銀ができる地方創生であり地域貢献ではないだろうか。

労働流動性の創出には別の効用もある。政府主導で働き方改革が進められているが、その施策の多くは、機能しているとは言い難い。残念ながら、どんなに啓蒙したり、規制したりしても、パワハラもセクハラも超過残業も不正もなくならない。地銀においても例外ではない。SNSや週刊誌などには真偽は不明ながら、多くの地銀の事例や告発内容などが掲載されている。

これら深刻な問題の唯一の解決策は、「イヤなら辞められる」環境を整えること、つまり、いつでも転職できるという労働流動性の創出に尽きるのではないだろうか。イヤなのに辞められないから、当人は我慢して問題が深刻化し、相手(企業や上司、同僚など)もつけ上がることになるのではないだろうか。