営業職時代から「ワークロングが嫌い」

長時間労働についても意識改革が進みつつある。谷内さんは、プロなら働いた時間ではなく成果で評価されるべきだとし、場所や時間にとらわれない働き方を自ら実践するとともにそれを社内に発信。コロナ禍を機に、働く場所や時間を社員自身が選択できる制度「New Work Styleグローバルガイドライン」も導入し、より柔軟な働き方への転換を推し進めている。

上司からの「もう一軒行ってこい」にも「やることやったら定時で帰ります」とちゅうちょなく返していたという谷内社長。(写真提供=参天製薬)

もともと、人を成果ではなく労働時間で評価する風潮に違和感があったという谷内さん。かつて赴任していたヨーロッパでは、目指す成果をいかに効率的に、少ない労働時間で出せるかが重視されていた。

しかし、日本ではまだ「ワークハード(一生懸命働く)=ワークロング(長時間働く)」と考える企業も多く、その文化にはずっと疑問を感じていたという。

自身は営業職としてキャリアを積んできた。もちろん猛烈に働いた時期もあったが、当時から長時間労働には価値を感じられず、「少ない労働時間で地区トップの成績をとるにはどうしたらいいか、そればかり考えていた」と振り返る。

上司の「もう一軒行ってこい」に「いえ、定時に帰ります」

効率よく外回りを終えて15時ごろに帰社し、上司から「時間が余っているならもう1軒回ってこい」と言われたこともあった。そんなときも、数値目標の達成が見えていれば「いえ、やることをやったら定時に帰ります」とちゅうちょなく帰宅していたという。

「より高い成果を出そうと夜中まで仕事をしたこともありますが、評価のためではなく自分のこだわりでやったこと。ワークロングには弊害しかないとずっと思っていました」

その後、組織長になるとこの思いはさらに強くなった。成果を出してこそプロなのだから、必ずしも長時間働く必要はない。仕事は人生の一部でしかないのだから、家族との時間を犠牲にしてまで働くのはおかしい――。

組織長時代にはこの方針を貫き、自分はもちろん部下に対しても長時間働く状況をつくり出さないよう努めていたそう。当時はまだ「ワークロング」の部署も多かったため、谷内さんの部署は異色の存在。それでも周囲の声は気にせず、成果をしっかり出すことに専念し、結果を出してきた。