具体的にいうと、企業理念の共有をより強固にするため組織改革を行い、それまでの地区本部制を廃止して、間接部門の機能を本社に集中させ、同時に人事制度、メニュー戦略、店舗運営などもすべてQSCを前提につくり変えました。1週間で組織の大幅改革を断行したのです。
もちろん、そういうドラスティックな変化に異を唱える人もいます。その場合はとにかく話を聞くことです。リーダーは常に右から左、上から下までできるだけ幅広く意見を聞く姿勢をもつべきであり、それを怠れば容易に裸の王様と化してしまいます。
しかし、話を聞いたうえで、どの意見を信じるかというのは、あくまで私のジャッジです。180度違う意見も聞くけれど、最終的に決めるのはリーダーだということは忘れてはなりません。そして、いったんこれでいくと決めたら決してぶれないこと。
「これからは新しいバスを走らせる。乗車券を買うかどうかは自分で決めてください」。私は就任直後、役員にこういって決断を迫りました。全員が納得するまで話し合うなどという悠長なことでは、改革など実行できません。ノーという人には去ってもらう。結果、上層部の9割が入れ替わりました。しかし、危機的状況では、こうした厳しいリーダーシップが必要なのです。
社員には、QSCだけをしっかりやるという私の掲げた戦略はおおむね好評でした。企業理念に立ち返ることが、社員の失ったプライドを回復するのに役立ったというわけです。
ただし、改革というのは実行する段になると、必ず筋肉痛を伴います。
ひとつ例を挙げましょう。注文を受けてからハイスピードでできたてのハンバーガーを提供できる「メイド・フォー・ユー」というキッチンシステム。私はこれがQSCに不可欠だと判断したので、期末までに全店舗に導入するよう指示を出しました。ところがもともとの計画では3年かけて随時入れ替えるということだったので、当然あちこちの現場から無理だという声が上がってきます。
でも、私は妥協しませんでした。彼らが私と同じ思いでQSCに真剣に取り組んでいるならば、必ずできると信じていたからです。そして、半年後に彼らがそれをやり遂げたのを目の当たりにしたとき、ようやくマクドナルドらしさが戻ってきたことを、私は確信しました。