孤立化を防ぐにはどうすればいいのか

なぜ他人や社会のせいにしてしまうのか。読売社説は「人間関係の希薄化」と指摘する。

「善悪の区別や価値観を身につけるには、家族や友人との関わりが大切だ。だが、地域の結びつきが弱まり、人間関係は希薄化している。家庭や学校教育を通じて、幼少期から本を読み、様々な体験を重ねて心を育むことが重要だ」

無差別殺傷事件の犯人たちは、家族や友人がいなかったのだろうか。本を読む習慣がなかったのだろうか。問題意識には共感するが、こうした意地悪な反論に応えられない書き方ではないだろうか。

最後に読売社説は「無差別殺傷事件の容疑者は、事件を起こす前、職場や学校に友人がいなかったケースが多い。孤立を深め、胸の内で社会への憎悪を膨らませていることに、誰かが気付くことはできなかったのか」と訴え、こう主張する。

「警察は、今回の事件を背景事情にまで踏み込んで解明し、再発防止に生かしてもらいたい」

孤独が事件の引き金になるというのは、その通りだろう。周囲に心配する友人がひとりでもいれば、犯行を止められたのではないか、というケースは数多い。孤立化を防ぐにはどうすればいいのか。電車内のセキュリティを高めるには限度がある。それよりも、「なぜ社会を恨むようになるのか」という点への考察を深めたほうが、再発防止につながるのではないだろうか。

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