監禁され、悪魔祓いや宗教家のもとに連れまわされる
「警察署の一室で着替えながら、私はカースト制度のおぞましさと、そのために私が経験しなければいけない屈辱に身が震えたわ。警察は私の父に私たち二人をこれ以上困らせないと一筆書かせた。そして私はシャンカールと一緒に家に帰った。
これからはシャンカールの父が私の父で、シャンカールの兄弟が私の兄弟だと、彼らの家に入りながら私はそう思った。そして今でもそれは変わらない」
警察署で念書を書かされたにもかかわらず、カウサリヤの両親と親戚らは彼女とシャンカールを攻撃することをやめなかった。一度は、年老いたカウサリヤの祖父を使って彼女をだまし、無理やり親戚の家に閉じ込めた。そして怪しげなまじないをするスワミ(宗教家)や悪魔払いをする女性のところなどへ連れ回し、なんとか彼女の気持ちを変えさせようとした。
彼女が親戚の家に閉じ込められている時、彼女の父親の携帯電話に警察から電話がかかってきた。たまたま携帯電話がスピーカー状態になっていて、カウサリヤはその会話を聞くことができた。警察官はこう言った。
「男があなたの娘さんと駆け落ちして結婚した件ですけど、向こうの父親が警察に告訴してきました。事態は深刻になりつつあります。警部に渡すために2万ルピー(為替レートでは約3万円だが、感覚的な価値は約30万円)持ってきてください。それから娘さんを説得して、もう男のところには戻りたくない、両親のところに戻りたいと言わせてくださいね。そうすれば、あなたの希望通りになります」
「毒を持ってくるから、それを飲んで死になさい」
その後、叔父の家に弁護士がやってきてカウサリヤにどうしたいのか尋ねた。彼女はシャンカールのところに戻りたいと訴えた。また親戚たちが集まり、両親の家に戻るよう説得した。
しかし彼女が気持ちを変えないため、彼女の両親は「毒を持ってくるから、それを飲んで死になさい」と言った。その間にも父親は警察署や弁護士らからの電話を頻繁に受けていた。父親はしばらくどこかへ出ていった後、戻ってきて言った。
「お前はあの低カーストの犬のところへ戻って死んでしまえ。私たちはお前とは縁を切る」
弁護士がやってきて、彼女を警察署に連れていった。道すがら「両親に誘拐されたことは絶対に言わないように」と忠告してきた。彼女は「自分はシャンカールと一緒にいたいだけだから、彼の言うことに従う」と言った。警察署にはシャンカールが迎えに来ていた。
カウサリヤが実の両親に誘拐され、5日間にわたって監禁された後、シャンカールの元に戻ってからも、両親からの嫌がらせは続いた。
最後には彼女の両親と親戚は、100万ルピー(約150万円、感覚的な価値としては1500万円近い)を支払うから彼女を戻すようにとシャンカールの父親に掛け合いにきた。貧しいシャンカールの父親にとって、100万ルピーは見たこともない大金だったが、彼は「(あなたは)どうしたら自分の娘に値段をつけることができるのですか?」と拒絶した。