「大学が生き残るためにも、箱根駅伝に出場し続けることが使命」

今年の予選会は風が強く吹いていた。そのため、チームとしては昨年の反省を生かして「速さ」の対応に力を注いできたが、今回は「(風に抗う)強さ」も求められた。そこで予選会当日の天候を見た川崎監督は当初予定していたよりも、5kmにつき10秒タイムを落とすように指示。この冷静かつ適切な判断がぴたりと当たった。

5km通過時は15位だったが、10kmで12位、15kmで9位と徐々に浮上。最終的に10時間43分08で見事7位通過を果たしたのだ。

「昨年は雨の大会になり、思うようなレースができませんでした。これまでは(ケガや風邪などの)リスク回避の意味もあり、雨の日などはポイント練習を翌日にズラして行うこともありました。でも今年は雨でも、風が強くてもポイント練習の日は変えませんでした。今年の予選会は強風のなかのレースになり、強さのないチームはもろに影響したと思います」

1年で“箱根復帰”にこぎつけた中央学大だが、川崎監督がひと安心している暇はない。2020年予選敗退および2021年本戦不出場はチームビルディングに極めて大きな影響を与えた。現在の1年生は好選手が入学してきたが、来春の新入生候補は近年で最も競技レベルが低いという。さらに言えば、再来年2023年度のスカウティングも苦戦中なのだ。

伝統校やブランド校ではなく、強化費も潤沢とはいえず、ケニア人留学生もいない。そういうチームが群雄割拠の箱根駅伝で生き残るのは至難の業だ。2020年の予選会で敗退した後、川崎監督は大学側にこう訴えた。

「(もし、2021年予選も敗退して)2年連続で落選したら、もう這い上がるのは無理だと思います。さらなる強化をお願いします」

強化費は増えなかったが、2019年の台風で冠水し、傷んだグラウンドが改修された。

「11月7日には全日本大学駅伝がありますが、箱根予選会に集中してきたので、正直、そこまでは考えられません。箱根駅伝も今の状況ではシード権の獲得は無理です。とにかく来年の正月をワクワクした状態で迎えられるようにしたい。少子化の影響もあり、駅伝部が箱根駅伝に出られないと、大学経営にも影響するでしょう。大学が生き残るためにも、入学してくれた選手たちの夢をかなえるためにも、箱根駅伝に出場し続けることが使命だと思っています」

予選会でいち早く“集団走”を取り入れるなど、知恵を絞って、“大手”に戦いを挑んできた中央学大。独自戦略で箱根路を沸かしただけでなく、多くの好選手も輩出してきた。

今後も厳しい戦いが続くことは避けられないが、2022年に還暦を迎える川崎監督の目はギラギラとした野心をたぎらせている。

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