1位に輝いたのは東京理科大1年生――。9月に行われた大学生の陸上競技大会(日本インカレ)で“珍事”が起きた。スポーツライターの酒井政人さんは「メジャー種目の400mで陸上強豪の大学の選手を差し置いて勝ったのは、全体練習は週2で自前のトラックもない東京理科大の選手。その背景には、根性・努力至上主義のチームにはない頭を使った練習のしかたにある」と指摘する――。
全体練習は週2回の東京理科大1年生が日本インカレ優勝の“珍事”
今年9月に行われた日本学生陸上競技対抗選手権大会(日本インカレ)。1928年に第1回が開催された歴史ある大会の各種目で今回チャンピオンとなった選手の大学は、東洋大、城西大、東海大、順天堂大、早稲田大、明治大、筑波大、日本大、福岡大といった強豪大学が大半だ。
そんな中、異彩を放つ大学が1校あった。東京理科大だ。同大は、講義内で学生に大量のレポートや実験など学業が大変なことで知られている。
この日本インカレで見事1位に輝き東京理科大史上初の快挙を果たしたのは、実力者がひしめくメジャー種目「男子400m」に出た友田真隆だ。なんと1年生である。しかも、自己ベストとなる46秒35で制した。
同大会は例年、私立大選手の活躍が目立つ中、東京大、京都大、名古屋大など旧帝国大の選手が表彰台に立つこともある。だが、東京理科大の選手が1位になることはそれ以上の“ニュース”だ。
東大、京大、名古屋大は卒業生を含めれば、いずれも陸上競技のオリンピアンを輩出したことがある。陸上部は伝統があり、キャンパス内にトラックもある。勉強が大変とはいえ、強豪大学に近い練習環境でトレーニングを行っており、大学で急成長する選手もいる。
一方の東京理科大はキャンパス内にトラックはない。そのなかで、1年生がどのようにして学生一まで上り詰めることができたのか。他大には自分よりキャリアも実績も上の先輩たちをいるのに、なぜそれを上回る結果を出せたのか。