なぜザ・体育会系の選手に学業第一の大学の選手が競り勝てたのか
友田は埼玉県の私立男子校の川越東出身。文武両道を掲げる進学校である。高校時代は薬学部を目指しながら陸上部に所属して練習に励んだ。昨年10月に行われた全国高校大会の男子400mで優勝している。当時のベスト(46秒51)は、昨年の高校ランキングトップだった。
友田は成績評定も高く、指定校推薦で東京理科大への進学を決めたものの、大学で競技を続ける気持ちは一切なかったという。そのため、昨年10月から半年間全く練習をしていなかった。
「固定観念で、理科大で競技を続けるのは無理だと思っていたんですけど、大学に入ってもやることがないなと思って、陸上部に顔を出したんです。すごくいい雰囲気で練習をされていたので、結果はどうであれ、イチから頑張ろうと思いました」
東京理科大は都内の神楽坂キャンパス、葛飾キャンパス、千葉の野田キャンパスなどがあり、陸上部員は意外にも100人以上の大所帯だ。しかし、チームの全体練習は水曜日と土曜日の週2回しかない。使用できる競技場を探して、授業を終えた選手が集まり、一緒に汗を流しているという。
「1回の練習時間は水曜日が2時間半、土曜は3時間くらい。走る練習は1週間で、この2回だけです。あとは個人で週に1、2回ウエイトトレーニングなどをしています。その時間も1時間くらいですね」
強豪大学の場合、週6で全体練習があり、長距離種目では朝練習もある。しかし、前述したように東京理科大の場合は練習環境が大きく異なる。トレーニングに費やせる時間は1週間で7時間ほどしかないのだ。
「最初は趣味程度で続けられればと思っていたので、正直、ここまで伸びることは予想していませんでした」
本人が驚くのも無理もないだろう。半年間のブランクがあり、練習量は高校時代の半分以下にもかかわらず“学生日本一”になったのだから。そこにはどんなマジックがあったのか。友田はこう分析している。
「高校だと顧問の先生がメニューを決めます。気分が乗らない日もあったんですけど、大学では走るのは週2回だけです。弱点を克服するための練習をして、かつ、練習時間を大切にしようとする意識が強くなりました。1回1回の練習では質を高めています。東京理科大には指導者がいないので、自分で考えてできているのが好結果につながっているんじゃないでしょうか」