「おごるべき」の意識が強いのは中年層の未婚女性

その前に、内閣府の調査では触れられていない配偶関係別の状況を深堀りしてみたいと思います。ポイントは、未婚男女、かつ、年収別に「おごりたい・おごられたい」意識に違いはあるのだろうかという点です。当然、「おごりたい男」というのは年収も高いはずだと思うでしょう。

まず、40~50代をご覧ください。

やはり、男性は年収が多いほど「おごるべき」意識が高くなっており、未婚男性全体の平均を超えるのは年収500万円以上で45%となります。既婚男性でも同様です。一方、40~50代女性は年収にかかわらず一定ですが、すべて女性全体の平均を上回るとともに、500万未満までは男性より上回っています。未婚女性の場合、20~30代の若年層より40~50代の中年層のほうが「男がおごるべき」意識が高いということになります。年収が高いほど「男がおごるべき」意識が下がる既婚女性とは真逆の傾向です。

男性の「おごりたい」意識は低年収と高年収で二分化

興味深いのは20~30代のほうです。300万円未満の未婚男性低年収層がおごれないのは分かるとして、500万円以上の高年収層も低く、「おごりたい男」は真ん中の中間層に集中しています。既婚男性と比較すると真逆になっています。既婚男性は、むしろ低年収と高年収が「おごりたい」派です。同じように20~30代の未婚女性も未婚男性とまったく同じで、中間層が「おごるべき」となっています。

結婚適齢世代である20~30代未婚男女だけに着目すると、実は、同じ年収層同士の「おごるべき」価値観はほぼ一致していて、男女が揉める要素はないといっていいわけです。つまり、ネット上でいがみあっているのは、「男がおごるべきだ」と譲らない40代以上の未婚女性と、40代以上で「おごりたくない」低年収男性との間で起きている中年未婚男女戦争ではないかと推測できます。40代以上の高年収未婚男性は「おごりたい」派ですが、その対象は若い女性に向いていると思われます。

そもそも付き合うこともない男女が喧嘩しているようなもの

実際、婚姻に結びつくカップルというのは、年齢や年収が近い同類婚が多くなっています。当連載の<岡村隆史さんの「年の差婚」を羨ましがる中年男性に降りかかる現実>でも解説したように、かつてのような、夫年上婚は激減しています。出会いのきっかけも、職場や友人の紹介が今もなお多い。

すると、当然同類コミュニティの中でのつながりになるため、年齢が同じなら年収もほぼ同じになる可能性が高まります。要するに、リアルな世界において、マッチングする同士では「男がおごるべきだ」「いや、女も払うべきだ」なんていさかいは起きないわけです。