根強いクオータ制への誤解と抵抗

今年の総選挙は、2018年「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(通称、候補者均等法、2021年6月に改正)が成立してから初めて行われる衆議院議員選挙である。同法は政党に、男女の候補者をできる限り均等にするよう努力義務を課している。さらに昨年2020年末には男女共同参画社会基本計画が閣議決定され、2025年までに国政選挙の候補者に占める女性の割合を35%にする目標を設定した。女性議員が増えるためにはまず候補者に女性が増えることが必須だからである。

諸外国では女性候補者を増やすために多様な制度を導入している。日本でもしばしば話題になっている候補者クオータ制(女性や若者、少数民族などに候補者、あるいは議席の一定割合を与える)がその代表的な事例である。クオータ制は現在世界の約100カ国以上で実施されており、女性議員を増やすための速攻策と呼ばれている。

日本でも遅ればせながら2010年代半ばから、候補者クオータ制の法制化を目指した立法運動が始まり、各党への働きかけが続いている。しかし国会の議論の中では「男性に対する逆差別だ」「能力のない女性が議員になる」などクオータ制に対する誤解や根強い抵抗があり、結局「男女の候補者をできる限り均等に」する理念を明記するだけで、実施を強制する措置を持たない理念法の制定にとどまった。女性候補者の擁立は、完全に政党の善意に委ねられることになったのである。

そのためか、制定直後の2019年に行われた統一地方選挙、参議院選挙のいずれにおいても法律の趣旨は生かされず、女性議員の増加は微々たるものであった。また今回の総選挙においても17.7%と、候補者の男女均等からは程遠い結果となり、女性議員の大幅増加は見込めない。

女性候補者を「増やそうとしない」政党

ただ、これには政党ごとに差があることも重要なポイントである。女性候補者の比率は、自民党が9.8%(前回7.5%)、公明党7.5%、立憲民主党18.3%(前回24.4%)、共産35.4%、維新14.6%、国民29.6%、れいわ23.8%、社民60.0%、N党33.3%であり、政権与党の女性比率が最も低い。

議席の大半を占める自民党は公認候補も多いので、自民党が女性候補者の擁立に消極的であることが平均値を下げるとともに、女性議員が増えない原因となっている。候補者均等法が求めている政党の自主的な努力への姿勢はほとんど感じられず、自ら合意した候補者均等法の趣旨を裏切る結果であると言わざるを得ない。

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