「この人がいなくなった」泣きながら訴える動画も

【于田】収容所では小さい部屋に数十人も詰め込まれていますから、今、新型コロナウイルス感染症の蔓延でどうなっているかが心配です。コロナだけでなく、病気になっても治療を受けることができない。

于田ケリム、楊海英『ジェノサイド国家中国の真実』(文春新書)

亡くなる人が多いからなのか、強制収容所の近くに火葬場がつくられていて、漢民族を対象に、火葬場の職員を一般の給料の数倍で募集しています。

【楊】ムスリムは本来、土葬だから、火葬してはいけないのに、強制的に火葬させられている。「ウイグル人として、ムスリムとして死ぬこと」も許されていない、ということです。

【ローズ】以前は、家族の写真を背景に、「この人がいなくなった」と泣きながら訴える動画が出回っていましたが、今はそうしたアカウントもすべて閉鎖されてしまったので、最近はTikTokで絵文字を使って、「拘束された」とか「収容された」ということを伝えようとしています。

【楊】それが国際社会への発信手段になっているんですね。

【于田】子供たちは、両親が収容されると、親戚がいても預かることは禁止されて、必ず「孤児院」に入れられて監視されます。言葉は中国語、食べ物も漢民族と同じもので、子供から「ウイグル人意識」を消し去ろうとしています。

「子供の強制収容所」も存在している

親が強制収容所から出てきても、その親の元に子供が戻されたという話は聞いたことがありません。中国当局としては、「子供を施設に入れて、無料で教育を施してやっているんだ」と言うのでしょう。

【楊】ところが実際には「子供の強制収容所」で、名前も、言葉も、食事も、生活習慣も「中国化」させられているわけですね。

【ローズ】そういう子供たちが中国語で話す動画があります。自分のお父さんの名前も言えない。言うと危ないからです。自分の名前は「ワン」とか「リー」と中国名を言って、「以前のウイグルの名前は何か」と聞かれても答えない。

そうした「孤児院」にウイグル人の子供たちが数十万人単位で収容されていると思われます。

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