中国政府は、東トルキスタンに建設した核実験場で46回の核爆発実験を行っている。静岡大学教授の楊海英さんは「これからの核実験はいずれも周辺住民に予告せずに行われており、住民たちは核実験の事実を知らないまま生活している。漢民族は核実験の事実を知っているため、近づきたがらない」という――。(第1回)

※本稿は、于田ケリム、楊海英『ジェノサイド国家中国の真実』(文春新書)の一部を再編集したものです。

東京の在日中国大使館前で、新疆ウイグル自治区での騒乱事件について抗議する在日ウイグル人たち。掲げているのは東トルキスタン独立運動の旗=2009年7月8日
写真=EPA/時事通信フォト
東京の在日中国大使館前で、新疆ウイグル自治区での騒乱事件について抗議する在日ウイグル人たち。掲げているのは東トルキスタン独立運動の旗=2009年7月8日

周辺住民に事前予告せず核実験を40回以上も実施

【于田ケリム(日本ウイグル協会会長)】中国政府は、東トルキスタンのロプノールに建設した核実験場で1964年から1996年にかけて、地表・空中・地下において延べ46回、総爆発出力(エネルギー)およそ20メガトン(1945年に広島に投下された原子爆弾の1000倍に相当する爆発出力)の核爆発実験を行ないました。

地表核爆発は12回、空中核爆発は11回、地下核爆発は23回にも達しています。しかし、いずれの場合も、周辺住民に事前に予告し、避難させるなどの安全対策は取っていません。それどころか、ウイグル人には、核実験自体知らせていないので、ほとんどのウイグル人住民は、核実験の事実も被害状況もいっさい知らずに暮らしています。

【楊海英(静岡大学教授)】1958年から青海省で原水爆工場の建設が始まっています。現地のモンゴル人、チベット人、トゥマト人を強制的に立ち退かせた跡地に工場が建設され、製造された原子爆弾が、新疆タクラマカン砂漠の東端にある「さまよえる湖」ロプノール湖畔に持ち込まれました。

あろうことか、かつてシルクロードで栄華を誇った「楼蘭王国」の地で、核実験が行なわれたんです。1990年代初期の現地調査でその近くを通った時、漢民族の人が「ここから早く出よう」と物凄く嫌がっていました。

私が「せっかく楼蘭に来たんだからゆっくりしよう」と言うと、「いや、核実験をしているから、ここにいたら白血病になって、髪の毛も抜けちゃう」と言うんです。そこで「あんたたちは食事に立ち寄るのも嫌がるのに、ウイグル人はここに住んでいるじゃないか! ウイグル人に核実験のことを知らせていないんでしょう!」と指摘して、激しい言い合いになりました。