正しいダイエットは、量ではなく質を変える。体重を減らそうとするのではなく、脂肪を飛ばして筋肉を増やす。体脂肪率の低い筋肉質の体に変身すると、基礎代謝量が多くなるから、多少のことではリバウンドしないのだ。

では、筋肉質に生まれ変わるために、何が必要なのか。

まず、食事だ。低糖質、低脂肪、高タンパクへと質的転換を図る。当然、筋トレも必要だ。しかも、自分の限界を超える強い負荷をかけなければ意味がない。筋肉を破壊しないと、新しい筋肉は生まれてこない。いわば、破壊と創造だ。

ダイエットの秘訣は量より質的転換だと悟った私はハタと気づいた。企業も同じではないか……。

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身体も会社も「引き締め」が大切

リーマンショック以降、不振に喘ぐ大企業の多くはメタボ企業だ。図体は大きいが、多額の有利子負債を抱えている。借金は脂肪同様、つきやすく取れにくい。好況期は借金をしても売り上げ規模を拡大すれば儲かった。しかしいまは、将来の投資機会に備えて、自己資本比率(総資産に対する自己資本の比率)を高め、筋肉質の会社に体質改善すべきだ。それには、借金を減らして利益剰余金を増やすしかない。売り上げの規模ではなく、質を高めるしかないのだ。

大企業のダイエットは難しい。多くの社員は、「うちの会社ヤバいんだよね」などと言いつつ、当事者意識がない。そんな社員を解雇もできない。だが、体質が変わると寒さが実感できる。そして、寒さに立ち向かう闘争心がわいてくる。心が変わるのだ。実はこれこそ、ダイエットの最大の効果だと言っていい。メタボを解消できた企業だけが、業績回復という階段を軽やかに駆け上がるのだ。

(山田清機=構成 小川 光=撮影)