人の噂に尾ひれをつけて拡散する人たち

世の中には「なぜ、そんなことで得意になれるのか?」と思うようなことに、喜びを感じる人がいます。前述した「メンタル不調者を何人出したか」で競い合っていた人たちもそうですが、ここで紹介するのは面白半分に人の噂を拡散する人たちです。

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会社内の噂話、ご近所の噂話、ワイドショーでの芸能人のゴシップ、最近ではSNSによる真偽不明の噂話など、本当に世間の人はゴシップネタが好きなのだなと思います。

そして噂話をすることで、憂さを晴らしたり、得意になったり、「他人の不幸は蜜の味」と言わんばかりに深い満足感を感じる人さえいます。

以前、私がカウンセリングをしていたある会社では、社内の人間同士の噂話のせいで、精神的に追い詰められてしまう人が何人も出ていました。

そこで私が介入して、噂話の真相を精査していくと、どの噂話にも共通する点があることがわかってきました。それは何かというと、噂話に尾ひれがついて拡散されることでした。最初はたいした話ではなかったものが、人から人に拡散されていく過程で尾ひれがついていき、最後には、最初の話とは全然違うものになっていた、なんてケースもありました。

たとえば、「この間、会社の近くにある△って居酒屋あるじゃない? あそこで、同期と飲んでたの。そしたら、課長と経理のIさんが二人で一緒に飲んでるの見ちゃったんだよね」と最初の噂が立つとします。

噂が人づてに伝わっていく過程で、「ねえ、ねえ知っている? 課長と経理のIさんって付き合ってるんだって」と尾ひれがついてしまいます。「えー課長って既婚者だよね。それって不倫だよねー。あの二人って最低」とまでなってしまう場合もあります。

ところが事の真相は、課長とIさんは確かに二人で飲んでいたけれど、遅れて参加した別の社員が数十分後には合流しているので、正確には二人だけで飲んでいたわけではなかったのです。

悪気なく“伝言ゲーム”を楽しんでいる

このように、蓋を開けてみればたいしたことがないのに、面白半分に尾ひれをつけて噂を広める人たちがいるから、大事おおごとになってしまうのです。噂を拡散する人たちは、この伝言ゲームを楽しんでいます。本当はゲームなどと言ってはいけないのですが、彼らにとってはゲームです。

しかし噂の当事者にとっては……。いたたまれなくなって「もう、会社を辞めようか」というくらいショックを受けます。噂を拡散している人たちは、人を陥れてやろうとまでは考えていないのかもしれませんが、被害者にとってはまさに「いじめ」です。