スポーツハラスメントへの意識が向上している

2018年には耳目を集める事件が多発しました。3月に五輪4連覇中だった女子レスリング選手が日本代表強化部長のパワハラを訴えると、5月には日本大学アメフト部の悪質タックル問題、8月にはリオ五輪代表だった女子体操選手(当時18歳)への男性コーチによる暴力が明るみになっています。当時盛んになった#MeToo運動もあって、当事者である選手やその家族のスポーツハラスメントに対する意識向上に繋がりました。

日本スポーツ協会(JSPO)が公表した「スポーツにおける暴カ行為等相談窓口相談件数推移」を見ると、2018年から19年にかけて相談件数が大幅に増えています。これは、同協会職員が相談を受けた案件を弁護士がヒアリングして各競技団体へ調査依頼する形から、弁護士8人が直接電話対応するようになった影響もあるとされています。14年10月から20年8月までの累計相談数は651件。子どもから成人まで幅広い被害者区分で相談を受けるなか、小学生が43.7%を占めています。また、相談内容は暴力は2割程度にとどまり、暴言やパワハラが6割近くを占めています。

「気合が足らない」グラウンド10周と平手打ち

被害当事者が少しずつ我慢しなくなったことを示す象徴的な事例があります。

2013年6月。大分県の小学生バレーボールクラブで夕方以降の練習中、監督が「気合が足らない」と怒鳴り始めました。当時5年生だった女児を含む3人が「外で走ってこい」と、夜の20時前後、照明もなく雑草が膝丈まで伸びた廃校のグラウンドを10周ほど走らされ、その後「声が小さい」という理由で女児ともうひとりが頭を平手打ちされました。

写真=iStock.com/Matt_Brown
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被害女児の母親は「これまでも暴力があるのではないかと思っていましたが、ほかの保護者が(監督を)かばうので、我慢するしかなかった」「これまでも大会前になると保護者の見学を一部の親が立ちはだかって止めることもあった」と言います。

密室状態の練習に不穏な空気を感じた女児の母親が「大丈夫でしょうか?」とほかの親に尋ねると「(監督は)最後のとどめは刺さないから大丈夫。目標は全国大会に行くことだから」と返されたといいます。