筆者提供
赤木雅子さんが新幹線から見た夕焼けに雲

その日、手紙の記事を見た辻元議員から連絡があった。公開された赤木雅子さんの手紙を、代表質問で全文読み上げてもいいだろうかという打診だった。総理に回答を迫るという。“総理への訴え”を託すのを断ったのに、そこまでしてくれるなんて……雅子さんは再び即断した。

「辻元さんにお礼を伝えに行きます」

誹謗中傷への怖さより、大切なことがある。帰りの新幹線から見えたきれいな夕焼け雲も、励ましてくれるようだった。

大阪で初めて対面した辻元議員の素顔

翌9日、午後6時半、大阪府高槻市。雅子さんは辻元議員の地元事務所を初めて訪れた。ここ数日、初めてのことだらけだ。辻元議員は総選挙を前に大阪府豊中市で応援演説をしていて、少し遅れるという。豊中といえば因縁の場所。森友学園に8億円値引きして売却されたあの国有地があるところだ。

しばらくすると、「すみませ~ん、お待たせしちゃって」とお詫びしながら部屋に入ってきた辻元議員。室内の雰囲気がさっと明るくなったように雅子さんは感じた。

「こちらこそ、お忙しい所にいきなりお時間をとっていただいて」

向かい合ってあいさつするやいなや、辻元議員が雅子さんの口元を指して笑顔を見せた。

「あ~っ、同じや!」
「そうですね」

二人とも同じピンクの不織布マスクをつけていたのだ。

「どこで買うたん? ネットやろ?」
「いくらやった? ○○円ちゃう?」

ポンポン飛び出る、いかにも大阪人らしい言葉に、初対面の固さが一気にうちとけた。辻元議員はバリバリの大阪弁で笑かしてくれるが、ご本人はとてもスマートだ。雅子さんは見とれてしまった。手元を見ると、スマホのカバーもピンク、その他の身の回りの品もピンク。

「男が中心の政界で頑張っているけど、本当は可愛い人なんだな」

なんだかほっとした。そこでふと気がついた。

「私は辻元さんのように攻撃されるのが怖かったけど、辻元さん自身は怖くない。怖いのは攻撃してくる人たちなんだ」

やがて辻元議員が雅子さんの目をじっと見ながら心配するように語り掛けた。

「一人で暮らしてるの?」

その言葉に雅子さんは、お互い一人で闘う女性としての心遣いを感じた。辻元さんも攻撃されれば傷つくし怖いこともあるだろう。雅子さんも同じだ。政界も裁判も財務省も、周りは男だらけ。男性たちに囲まれる圧迫感、攻撃される恐ろしさ。女性同士だからわかりあえる。

「私の裁判人生に、やっと女性が現れた……」

そう思うと気持ちが落ち着いた。……帰りに、辻元議員おススメの地元中華料理店の餃子をいただくのも忘れなかった。