社員のフリーランス化が進む大手企業

テレワークの普及や政府の後押しなどもあり、副業や雇用によらない働き方への関心が高まっている。専門性の高い個人にとっては仕事の機会が増えるほか、キャリアアップや収益増に繋がる可能性もあるだろう。人生100年時代を見越して一つの企業や仕事にしがみつくのではなく、複数のスキルを身につけ、柔軟にキャリアを変革させていくべきという考え方も理解できなくはない。

こうした機運の中、電通やタニタなどの企業は希望する社員を個人事業主(フリーランス)化する制度を実施し始めている。電通は2021年から正社員の3%に相当する約230人を業務委託契約に切り替え、個人事業主化させる制度をスタートさせた。すぐに完全フリーランス化させるのではなく、希望者は退職した後、電通の子会社と業務委託契約を結ぶことで最大10年間は仕事の受注と一定の報酬を受け取ることができる仕組みだ。

社会保障の網からこぼれ落とさない政策を

一方、個人事業主化への動きは非正規社員などの立場においても起こり始めている。ウーバーに代表されるようなドライバーや配達人の個人事業主化をはじめ、事務や経理など契約社員や派遣社員が多く担ってきた仕事が、クラウドソーシングなどデジタルを活用することにより、個人請負化してきている。今後もこうした非雇用型のテレワーカーが増加していくことが想定される。

飯島裕子『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち』(光文社新書)

当初、コロナ禍により仕事を失ったフリーランスに対して何の保障もなかったことが問題となった。その後、持続化給付金という形で最大100万円までの保障が受けられることになったのだが、雇用保険、労災保険など社会保障制度から外れたフリーランスの危うさが露呈した出来事だったといえる。雇用によらない働き方が増加する中、労災保険の特別加入制度の導入など、政府はしかるべき政策を早急に打っていく必要がある。

コロナ禍におけるテレワークの普及や副業人口の増加など、働き方改革関連法の想定すら超えて、働き方は急速に変化しつつある。テレワークを含めた新しい働き方のメリットのみならず、デメリットにも目をやり、ここ数十年にわたり広がってきた正規、非正規といった雇用形態による差別や格差を広げる方向に進まないようにしていかなければならない。

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