プレジデント編集部では、毎年働きがいや働き方に関する調査を行ってきた。今回も約2000人(回答総数1986)を対象に実施。いま、働く人たちはどのような仕事観、職場観を持っているのか。一橋大学大学院商学研究科教授の守島基博氏とともに読み解いていく。
東日本大震災後、仕事観に「変化あり」と答えた人は3割弱、「変化なし」と答えた人が4割強だった。
「より高い給料を求めるようになった」と答えた人は4割程度。これは、安心・安全志向が高まり「働くモチベーション=お金」と答える人が増えたことを裏づける結果となっている。
独立・起業志向は「弱くなった」が57%、海外志向は「ない」が約65%、転職活動を開始した人はわずか約14%のみ。こうした結果からも、起業や転職などによって現状を変える選択はせず、現状にとどまろうとする姿が見える。
「社会貢献志向」が強まった人もいる。年収が上がるほど社会貢献志向は高まり、700万~1200万円で5割以上、1200万円以上で6割以上が「仕事を通じて社会や周りの人々に貢献したいと思うようになった」と答えている。
「年収が高い人ほど金銭的、時間的、精神的ゆとりがあるからでしょう」
家庭生活での変化としては、「安心・安全志向が強くなった」と答えた人が6割近くに上る。約4割が「高額消費に慎重」になり、5割強が「運用・貯蓄」に慎重になったと回答している。ここからもリスクは最小限にとどめ、いまある安心・安全を何より重視する姿勢が垣間見える。
「かつて日本企業を支えてきた、働く人の忠誠心や信頼感が失われつつあることが明らかになりました。これは憂慮すべきことだと思います。しかし一方で、会社や仕事に一定の距離を置き、仕事以外の人生に目を向ける人が増えてきたという見方もできる。『仕事のためならプライベートを犠牲にするのはあたりまえ』という、仕事と自分自身を同一化させる働き方こそ異常だったといえなくもありません。震災によって広い絆が重視され、家族との関係が見直されたように、いま日本人の働き方も過渡期を迎えています。個人も企業も、この未来が見えない閉塞状況を打破するためには、それぞれができることを一歩ずつ積みあげていく必要があるでしょう」