それらをどう活用するのかを、先ごろ創業者のスティーブ・ジョブズ氏が引退を表明して話題になった米国のアップル社を例に説明しよう。私は同社の業績が好調に推移していることを、夏前から予測できていた。

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会計士が日経新聞から先読みする方法

7月4日(月)掲載の産業天気図予測で、電子部品・半導体、そして通信業界は「薄日」、すなわち良好とされていた。次いで同月13日(水)の朝刊一面左にはスマートフォンに関する囲み記事があり、その中でジョブズ氏はデジタルライフの主役がパソコンからスマートフォンになると予言していた。これらはすべて中・長期的な話題だ。

一方、足元の短期的な動向として18日(月)の景気指標で私が注目したのが、現金給与総額、小売業販売額、新車販売台数の数字が上向き、個人の懐が温かくなって消費が回復傾向にあることだった。そこで日本での“スマホブーム”もさらに加熱し、アップル社は大きな恩恵を受けるはずと判断したのだ。

その読みは的中し、21日(木)の企業・財務面には、アップル社の顧客囲い込みが進み、4~6月期に過去最高の純利益に達したとの記事が掲載された。一見するとバラバラの話題に映るものも、実はこのようにつながっているものなのである。

1日15分でよいから、頭のなかで個々の記事をつなぎ合わせて1つのパズルを組み立てるように、新聞に目を通していこう。そうすると、決算書の数字にも血が通い始め、その会社の成長など微妙な変化を感じとれるようになっていくはずだ。

※すべて雑誌掲載当時

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)