「なんでこんな落差が生まれるのか」と石破氏

総裁選の出馬を断念して河野氏支援に回った石破氏は総裁選後、河野氏が敗れたことについて記者団にこう話していた。

「都会とか地方とか関係なく、多くの地方の支持をいただいたにもかかわらず、国会議員票が思うように伸びなかった。自分としてできる限りのことはやって、結果を出せなかったのはとても残念だ」
「なんでこんな落差が生まれるのか。自民党全体としてよく考えなければいけない」

1回目の河野氏の党員・党友票は候補者4人の中でトップの169票だったが、国会議員票は86票で、岸田氏、高市氏に次ぐ3位だった。石破氏が指摘する党員・党友票と国会議員票との「落差」はなぜ生じるのか。自民党はその根底にある安倍氏の支配や派閥の力学を解消すべきである。

岸田氏は「新しい政治の選択を示していく」と語ったが…

9月30日付の朝日新聞の社説は「自民新総裁に岸田氏 国民の信を取り戻せるか」との見出しを掲げ、まずこう指摘する。

「菅首相の退陣表明前、いち早く名乗りを上げた岸田氏は『政治の根幹である国民の信頼が大きく崩れ、我が国の民主主義が危機に陥っている』との現状認識を示した。7年8カ月に及んだ安倍長期政権と、1年で行き詰まった菅政権の『負の遺産』にけじめをつけ、国民の信を取り戻せるか、その覚悟と実行力が厳しく問われる」

岸田氏が出馬を正式に表明したのは8月26日だった。独断専行の菅義偉首相を標的にして出馬表明の記者会見では「国民の声に耳を澄まし、新しい政治の選択を示していく」と勇ましく語っていた。

しかし、岸田氏が総裁選で勝てたのは、安倍氏ら長老議員がその影響力を使って各派閥に働きかけ、岸田氏に投票させようと動いたからである。中堅・若手の議員もそれに同調した。それだけに岸田氏には朝日社説が指摘するように覚悟と実行力が求められる。

写真=時事通信フォト
自民党岸田派(宏池会)の会合で発言する岸田文雄総裁(左)=2021年9月30日、東京・永田町[代表撮影]