出世頭は「東大でも早慶でもなく、明大出身」
「これまでどおり一生懸命勉強してれば、誰かが評価してくれると思っているんでしょう。甘えですよ。まあ、困るのは志望者が殺到するような大手優良企業にかぎって、そういう東大生を期待値込みで採用していくことなんですが」
「でも、基本的に期待どおりの活躍はするんでしょう?」
東大卒社員のパフォーマンスが低いという話は、週刊誌の特集などではしばしば見かけるが、僕のまわりでは聞かない。
「まぁ、そうですね。大手は大手で露骨な幹部養成コースみたいなキャリアパスが整っていることも多いですし、敷かれたレールの上を走るのは得意な子たちですから。アベレージとして、東大生は優秀ですよ。ここで問題としているのは、『東大までの人』ですね。正直、仕事ではあまり使えません」
近年、大学卒業時点でもっとも社会人として即戦力に近い実力を備えており、出世頭を務めるのは、東大でも早慶でもなく、明治大学出身で飲食店アルバイトかインターンの経験のある学生だ——そう、小林さんは断言した。
業種にもよるのだろうが、ただ頭がいいだけの人間よりも、変なプライドもなくコミュニケーション能力にすぐれた人材の方が多くの企業では役に立つということなのだろう。
東大卒の中途採用は慎重になった方がいい理由
「これは余談ですが、中小企業の経営者さんが東大卒を中途採用しようとするときは、少し慎重になった方がいいかもしれませんね」
職場に合わなかったとき、新卒なら「ほかにやりたいことができた」とか「資格試験に専念したい」などとのたまってフイと退職してくれることも多い。
しかし、中途採用となると、周囲とのズレをものともせず居座り、トラブルにまで発展するということもしばしば起こるのだそうだ。
「来月入社する中途の社員がどうも東大卒らしい。東大卒の採用なんて、うちの会社はじまって以来だ。そりゃすごいね。前職はまったくの別業種らしい。なんでうちの会社に? 役員の紹介。部長の友だちの息子なんだって。
年は30手前で独身の男。まあ、このあたりまで合致すれば間違いないです。麻雀でいうところの『数え役満』ですね。当たったらヤバい」
なにも学歴にかぎった話ではない。人事担当者は客観的に見て自分の会社に不相応な経歴の人間をホイホイと採用すべきではないということだろう。一般によく言われるように、「安いものには理由がある」のだ。