「米国の圧力に対抗する狙いがある」と毎日社説
9月20日付の毎日新聞の社説は冒頭部分からこう指摘する。
「中国は当初、米国主導の対中包囲網と見なし、警戒していた。だが、トランプ前米政権が離脱を表明したことで態度を一変させ、習近平国家主席の肝煎りで申請準備を加速した」
まさに「鬼のいぬ間(ま)の洗濯」である。泰然自若の風貌とは逆に、習近平氏は実にずる賢い。
毎日社説も「米中対立が深まる中、多国間の経済枠組みに参加する姿勢をアピールし、米国の圧力に対抗する狙いがあるとみられる。国際的なルール作りで主導権を握り、影響力を高める意図もあるだろう」と分析する。
習近平氏は経済力と軍事面でアメリカを世界トップの座から引きずり落として中国をその地位に立たせたいのである。世界一の中国を目指すことで、自分は名実ともに毛沢東と同じ中国共産党の「党主席」の地位に付ける、と考えているのだろう。
「日本は中国の真意を慎重に見極める必要がある」
毎日社説は「習指導部は自由貿易を支える理念と逆行する行動が目立ち、安全保障を理由にむしろ経済統制を強めている。こうした姿勢を改めない限り、加盟国の理解は得られないだろう」と書き、最後に次のように訴える。
「日本は中国の真意を慎重に見極める必要がある。全ての要件を満たすことが加入の大前提であり、例外を許してはならない」
「トランプ政治を否定したバイデン政権だが、国内産業の保護を重視し、TPP復帰に後ろ向きのままだ。国際協調を掲げながら、自由貿易体制を守る責務を果たさないようでは、アジア太平洋地域の経済秩序が揺らぎかねない」
繰り返すが、議長国である日本の責任は大きい。中国のTPP参加を認めてはならない。そのためには参加するための条件、つまりTPPルールをすべての参加国の前で中国政府に示し、その場で明確な回答を得るべきである。
さらに日本はアメリカにTPP参加を呼びかける努力も怠ってはならない。中国が参加申請を行ったことで、バイデン政権の出方も変わってくるはずである。日本はその変化をテコにアメリカをTPPに組み入れるべきだ。