高層ビルの建設によって地形が変化した地域も

これに次いで年収1000万円以上世帯比率推定値が高いのは、麻布永坂町から麻布狸穴町をはさんだ反対側で、ロシア大使館と東京アメリカンクラブ、そして麻布台パークハウスがある港区麻布台2丁目(32.4%)、愛宕2丁目(32.5%)、虎ノ門タワーズレジデンスなどがある同虎ノ門4丁目(32.2%)、アークヒルズがある同六本木1丁目(32.1%)など、高層マンションが立地している場所が多い。

六本木ヒルズのある六本木6丁目は24.0%と意外に高くないが、これは推定上の問題、国勢調査への回答率が低いことのほか、ヒルズの周辺の10階以下の住宅に住む世帯が2割近くいることによるものだろう。

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これに対して六本木1丁目は、全世帯の94.7%までが11階以上の高層住宅に住んでいる。

六本木1丁目にはかつて、永井荷風の住処である偏奇館へんきかんがあった(当時の地名は麻布市兵衛町いちべえちょう)。しかし高層ビルの建設にともなって地面が削られたため、偏奇館が建っていた場所は現在では空中に浮かんでいるのだという(冨田均『東京坂道散歩』)。

変化が激しい東京では、地形が変わることもあるのだ。

児童相談所の反対運動で話題になった南青山

年収1000万円以上世帯比率推定値が20%台後半の地域になると、低層住宅の多い地域がいくつも出てくる。千代田区六番町(29.9%)、同二番町(28.4%)は、かつては一戸建ての高級住宅地だったが、現在ではほとんどが10階以下の低層マンションに建て替えられている。

これに対して港区元麻布2丁目(28.5%)、同元麻布1丁目(26.3%)、同西麻布4丁目(27.3%)、同南青山7丁目(25.8%)、同南青山5丁目(25.5%)などは、都心のことだから一戸建てが主流とまではいかないが、一戸建てに住む世帯の比率が10~20%程度あり、これに対して11階以上に住む世帯の比率は5~30%程度にとどまる。

ちなみに南青山5丁目では、2021年4月に児童相談所と一時保護所を含む港区子ども家庭総合支援センターが開設されたが、その建設にあたっては地元住民が「青山のブランドイメージを守って。土地の価値を下げないでほしい」などとして反対運動を繰り広げて話題になった(朝日新聞 2018年12月16日)。

ただしこれらの地域でも、一部には古い狭小な一戸建てが密集する場所もあり、六本木ヒルズと極端なコントラストをみせている。

しかし、さらに南に下って元麻布から南麻布に入ると、年収1000万円以上世帯比率推定値がかなり下がってくる。港区南麻布1丁目(19.5%)、同2丁目(18.2%)などである。狭いエリアのなかに、かなりの落差がある。

東京メトロ南北線の白金高輪駅で降り、麻布通りを北へ歩いて古川ふるかわを渡ると南麻布2丁目、その先が南麻布1丁目になる。1丁目に入ってすぐにあるのが、港区立東町小学校。作家・高見順の母校である。