高級住宅地は住みやすい地域なのか
最後に、埋め立て地に目を向けよう。先にみたように、港区の埋め立て地には高層住宅が多い。
いわゆるタワーマンションで、東京23区全体からみれば高所得者が多いのだが、年収1000万円以上世帯比率の推定値は15~20%の地域が多く、港区のなかでは決して高い方ではない。
これは中央区も同じで、銀座に近い大川端リバーシティ21のある佃1丁目は24.2%と高いが、他は20%前後で、交通がやや不便な晴海になると10%台のところもある。これらの地域は、中流サラリーマンにとって何とか手の届くタワーマンションが立地する地域だということだろう。
近年、港区のうち台地に位置する住宅地の一部で、「フードデザート問題」が話題となっている。フードデザートとは「食料砂漠」という意味で、食料品店が少なかったり、あっても品揃えや価格が人々のニーズに合っていないことから、生きていくために必要な食料が手に入りにくい地域のことを指す。
南青山、麻布、高輪など、港区のいくつかの住宅地では、食品を扱う店が高価格の高級スーパーに偏っている。高級スーパーは、以前から住んでいる富裕層、そして近年のマンション建設によって流入してきた新しい富裕層にとっては便利だが、それ以外の人々、とくに公営住宅などに住む低所得層は利用できない。
このためこれらの人々は、遠方の非高級スーパーまで行って買い物をすることを余儀なくされているというのである(中村恵美・浅見泰司「経済的アクセス困難性からみた大都市中心部におけるフードデザート問題の実態把握と規定要因」、岩間信之・田中耕市・佐々木緑・駒木伸比古「東京都心部再開発エリアにおける高齢者世帯の孤立と食の砂漠」)。
港区の高級とされる住宅地は、ブランドイメージに恵まれ、少なくとも一部の人々にとってはあこがれの住宅地だとはいえるかもしれないが、住むのに快適とは限らないのである。
・ビジネス・官庁街エリア、山の手エリアと下町エリア、埋め立て地もあり、かなりの多様性がある
・全体的に所得水準は高いが、高層マンションが林立する一方、狭小な一戸建てが密集する地域もあり格差は大きい