必ず同じ昼飯メニューを食べる二階派は派閥で「同じ釜の飯を食う」
4:石破氏と二階派
石破氏は今回の総裁選の出馬を見送り、河野氏支援を打ち出した。このことは派閥の動きに大きな影響を与えた。出馬見送りのニュースが流れるや否や、もともと麻生派・細田派は自主投票としながらも、派閥として麻生派が「岸田氏か河野氏」、細田派が「岸田氏か高市氏」を支持することを表明し、3人の候補者のうち支持する候補者をそれぞれ2人とし、麻生派は岸田氏も堂々と支持しても問題ないことを示し、細田派は実質的に河野氏排除の動きを見せたのだ。
二階氏は、「党役員人事改革」の旗印を掲げた岸田氏を応援することはない。二階派の山本拓氏は元妻の高市氏で動いており、そのほかにも数人は“離脱”する可能性はあるが、直近に開かれた二階氏と石破氏、二階氏と菅総理の会談などの流れを見ると、たとえ表向きは自主投票となっても、実際には、河野氏支持でまとまるのではないのではないかと私は見ている。
岸田氏の宏池会は、派閥内での昼食はいくつか種類のある弁当から選ぶ方式だが、二階派は同じメニューのものを食べる。「同じ釜の飯を食う」関係を構築し、鉄の結束と言われている。コロナ禍前は、夜の会合が終わると必ずみんなが同じところに集まって、意見交換してから解散した。他派閥の若手も積極的に飲み会などに誘うなど、とにかく結束と面倒見がいい。
落選議員に二階氏が聞いた「いま何が必要か、金かポストか両方か」
前自民参院議員である私には、今でも忘れられない言葉がある。2019年夏に落選直後、挨拶に行くと二階幹事長にこう言われて驚いた。
「いま何が必要か、金か、ポストか、両方か」
選挙に落ちればたちまち無収入になり、肩書も「前議員」となる。しかし、「ただの人」となっても、例えば「自民党幹事長補佐」といった肩書(ポスト)つきの名刺があれば、地元では効力を発揮するだろう。私は丁重にお金もポストもお断りしたが、落選後に他派閥から二階派に入った先輩もいる。大臣ポストが欲しくて二階派に行き、実際に大臣になった先輩方もいた。
こうした面倒見のよさが、勢力拡大につながった。二階派が“草刈り場”になることはないだろう。必ず派としてまとまって行動をし、その強さを改めて発揮するに違いない。
総裁選はこれまでは、派閥の長が出て争うという形が多かった。しかし、今回は派閥の長は、岸田氏のみ。派閥の機能は小選挙区制の導入により低下しているが、決してなくならない。岸田氏が前々回の総裁選で出馬しなかったのは、宏池会に属した者として、2000年の「加藤の乱」(加藤氏、山崎拓氏らが森喜朗首相の退陣を求めた倒閣運動。未遂に終わった)の結末の恐ろしさをよく知っているからだ。「出るからには勝ちにいかなければならない」。そうした言葉を繰り返している。