2Aの思惑「60歳手前の河野氏が総裁になると世代交代が一気に進む」
2:細田派と高市早苗氏、安倍元首相の思惑
では、高市早苗氏(60)はどうか。かつて細田派に所属していたが、大臣を経験した後、無派閥になった。安倍晋三元総理大臣(66)は同じ元細田派で政治信条が近いということもあり、高市氏を支援すると発表。推薦人に必要な20人の確保も安倍氏の支持表明により、保守団結の会の高鳥修一氏などを中心とする人たちから固められている。ただし、他派閥への広がりは限定的と見られる。
安倍氏はなぜ高市氏を推したのか。それは「政治信条が近い」だけではない思惑がある。安倍氏は、石破茂氏(64)か河野氏のいずれかが総理になることを避けたいと考えていた。理由は2つ。ひとつ目は、石破氏が前々回の総裁選挙以降、党内野党のように安倍氏を批判し続けたことで、両氏の関係が悪化していたこと。ふたつ目は、60歳手前の河野氏だと世代交代が一気に進み、80歳の麻生氏とともに党内を60~70代のベテランで仕切ることができなくなる可能性があるからだ。
石破氏については、9月14日に正式に総裁選挙に不出馬を表明し総理の目はなくなった。不出馬により、安倍氏は石破氏支持層が河野氏へ流れることを懸念し、より一層高市氏支援に力を入れるだろう。ここで、高市氏を応援することで、票を分散化し、河野氏が1回目の投票で過半数に達するのを避けなければならないと考えているはずだ。
総裁選告示直前になって、高市氏の自民党層での支持率は石破氏を上回る勢いで伸びているとの報道もある。安倍氏とすればこの勢いで決選投票に持ち込ませ、岸田氏vs.河野氏となった際には、岸田氏支援を打ち出すのではないかと見られている。
「森友問題の再調査」を巡る岸田氏のテレビでの発言に安倍氏が激怒したため関係が悪化したと指摘する向きもあるが、安倍氏は誰が総理総裁になっても、自分が影響力を行使できる立場を維持することを最優先に考えているはずだ。
3:参議院自民党内派閥の動き
私が今回の総裁選で注視しているのは、参議院内の派閥の動きである。
参議院最大派閥は、細田派の清風会。108人中、36人と3分の1を占める。それに次いで、参議院平成研20人、参議院麻生派13人、参議院宏池会12人となっている。彼らのグループはそれぞれに結束力が強く、投票先を一致団結して決める傾向にある。
参議院議員にとっての選挙とは、2022年の夏に実施される参院選を指す。もし新しい総裁を担いでも、来夏までに国民の支持を失ったら意味がない。1人区を多く抱える参議院選挙区は、世論の“風”の影響を受けやすい。また、衆議院選挙と異なり、政権選択の選挙ではないため、批判票も多い。
来年の参議院選挙で負けて、衆議院と参議院の与野党が逆転する「ねじれ」となれば、法案は衆議院の3分の2ルールでしか成立できなくなり、政権の体力を大いに奪い、政権交代へとつながるリスクも生む。
そのため、参議院議員はより慎重に、その場しのぎでなく、中長期的に安定政権を築くことのできる候補者を見極めて投票するだろう。383票の議員票のうち、100人を超える自民党参議院を制するものが総裁選も制すると言っても過言ではない。
つまり、来夏の参議院選挙での勝利までの選挙戦が自民党にとって大きな勝負なのである。