運用益が出ない最悪の場合を考えておく
前述のとおり、FIREは資産の運用益で生活するものですが、十分な資産がない場合、または高い年利回りが得られない場合は、資産を取り崩すことになります。
また、確実に4%の運用ができるわけではありませんし、株式などには値動きがあり、運用で得られる収益には波がありますから、ある程度の余裕は持っておかなければなりません。
では、運用益をあてにせず、資産を取り崩す場合はどうでしょうか。
1年間の生活費が310万円として、90歳まで生きるとしましょう。リタイアしてから年金を受け取るまでの年数(40歳でリタイアなら25年)は年310万円、65~90歳までの25年間は年金との差額が必要という前提で試算しました。必要額は以下のとおりです。
この金額は基本的な生活費であり、ほかに介護や医療のためのお金、自宅のリフォーム費用なども見込んでおかなければなりません。それを自助努力と退職金で賄えるかが、早期リタイアができるかどうかの目安といえます。
いざというときのための「稼ぐ力」は必要
「FIREに興味がある」という人は、なぜ興味があるのかを考えてみましょう。
仕事から離れて悠々自適で暮らしたいから?
たくさん稼げなくても、自分がしたいことに時間を使いたいから?
たしかに、ある程度の資産を築けば会社に縛られなくても済みますし、収入の多寡よりしたいことを優先するなど、選択肢が広がります。そのためには、iDeCoやつみたてNISAを使って、効率よくお金を貯めていくことが重要です。
もう1つ重要なのは、稼ぐ力を身に付けておくことです。
会社を辞めても、ほかの方法で稼げるだけのキャリア、人脈(人的資本)を持っておく。そうすれば、好きなことで、ストレスがない程度に働く、ということができます。ある程度の資産が用意できていれば、労働収入への依存度を下げられますから、完全なリタイアではなくとも、ほどほどに働くセミリタイアという生き方が可能となるでしょう。FIREを実現したあと、やっぱり少し働く、といった軌道修正もしやすいはずです。
大切なのは、メリット・デメリットを十分に理解したうえで、キャリアを選択すること。多様な生き方があっていい。そして、お金やスキルがあれば、その選択肢が広がることは間違いありません。