若いうちにリタイアする「FIRE」という生き方が注目されています。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「早くにリタイアすると老後の年金はもちろん、障害年金や遺族年金も減ります。そうしたデメリットや運用益が出せないという最悪の事態も想定しておく必要がある」といいます――。
仕事と退職の選択が示されたロードサイン
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「FIRE」に必要なお金

定年を待たず、早期に仕事を引退して、ゆっくり暮らす。そんなライフスタイルに憧れる人から注目されているのが、経済的自立と早期リタイアを意味するFIRE(Financial Independence, Retire Early)です。

従来の早期リタイアが貯蓄や退職金などを取り崩しながら生活していくのを基本とするのに対し、FIREは投資で得る収益で生きていく、という違いがあります。資産を取り崩していけば次第に資産は減っていきますが、FIREは資産を運用し、その収益で生活するため、資産を大きく目減りさせないというのが特徴です(値下がりによって資産が減る可能性はあります)。

とはいえ、生活できるほどの運用益を得るには、まとまった額の元手が必要です。必要な元手の目安は年間支出の25倍とされており、年間300万円で生活するなら7500万円、年間400万円必要なら1億円となります。

運用利回りも重要です。FIREでは年4%を目安としており、7500万円を年4%で運用すると年間で300万円、1億円では同400万円の運用益を得ることができます。

年間支出の25倍の資産と、年利4%というのが、FIREのキーワードです。

毎年いくらずつ貯めていく必要があるか

では、7500万円、1億円という資産を築くことはできるでしょうか。

たとえば、25歳から45歳までの20年間で7500万円を貯めるには、年4%の利回りでは年245万円、年3%では年間274万円のペースで貯める必要があります。

すでにまとまった資金がある人、収入が高い人など、「頑張ればいけそう」と思う人もいるかもしれません。しかし、20代~40代といえば、人生においてさまざまなイベントがある時期です。キャリアアップをめざす人も多いでしょうし、MBAなど自己投資をする人も多いと思います。住宅購入や子育てにもお金がかかります。人生のキラキラした時期には、人生を充実させるためにお金を使う、というのが大切なこと。FIREのために貯蓄に全力投球するというのは現実的ではないかもしれません。