結局、蓋を開けてみれば期待を裏切る結果となった。日本経済新聞社がまとめた主要企業の賃上げ率は1.74%と前年をわずかに0.09ポイント上回る水準にとどまった(3月24日現在)。労働組合、連合の調査(3月31日現在)でも1.97%と前年比0.03ポイントアップ、金額にして153円しか上がっていない。

今回の春闘で明確になったのは、経営側が従来から繰り返し主張してきた「企業業績の向上分は賃金ではなく賞与に反映させる」との主張をより頑なに守ったことだ。つまり月給(基本賃金)を上げると固定費の増加により、財務体質の悪化を招きやすく、国際競争で勝てない。それよりは企業業績で変動する賞与に反映させたほうが経営の舵取りがしやすいという論理だ。

しかも今回の賃上げにしても社員全員の月給が必ずしも一律に底上げされるわけではない。賃上げは大きく定期昇給(定昇)とベア(ベースアップ)とに分かれるが、定昇は毎年自動的に昇給する分。ベアは賃金原資を引き上げる分であり、これが春闘でいう賃上げを意味する。

ただし、最近は基本賃金を一律底上げするのではなく、「賃金改善」額と呼び特定の層・手当に配分する企業も増えている。

たとえば松下電器は今回の賃上げ額1000円を資格取得や健康診断受診、家族旅行などの福利厚生補助に投入する。同社は昨年も18歳以下の子供を持つ社員の支援分に充当している。また、東芝は社員の中の高度技能職の給与増に充てる。あるいは新日本製鉄やJFEスチールなど鉄鋼大手4社は休日や深夜出勤の時間外割増率の引き上げに賃上げ原資を充てることで決着した。

また、三菱重工は2000円の賃上げ原資を一応基本賃金に組み込むが、基本給の成績反映部分に全部を投入。成績評価しだいで上がる人がいる一方、上がらない人も出ることになる。同様に三洋電機も800円の賃上げ原資のうち、300円を若手社員の成果部分に重点的に配分する。