景気回復で期待大だった今年の春闘だが、蓋を開けると賃上げ率は低調。なぜ、好業績でも給料は伸びないのだろうか。

超好業績トヨタも3年連続1000円

<strong>経営再建中の三洋電機が7年ぶりの賃上げ</strong><br>
賃上げはすべての業界を通じて低調だが、賞与は高額回答が目立つ。<br>
※(1)賃金体系維持 (2)業績連動算定方式 (3)年収管理型賃金決定方式 (4)単年度431円+移行財源1465円 (5)役割給を1%引き上げ (6)初任給<br>
太字は2年間を単位とした金額。斜体は賃金制度維持分を含む。下線は平均賃金改定額。太字斜体はモデル賃金の改定額。
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経営再建中の三洋電機が7年ぶりの賃上げ賃上げはすべての業界を通じて低調だが、賞与は高額回答が目立つ。

景気が回復しても賃金が上がらないという特異な現象が6年も続いている。史上最高益を更新する上場企業が多い一方、国税庁の「民間給与実態調査」によると民間企業の平均年収は9年連続(2006年)で減少。現金給与総額も06年12月から07年7月まで連続8カ月で前年水準を下回り、以降も一進一退を繰り返すなど一向に上昇に転じる気配がない(「毎月勤労統計調査」)。

それを端的に示すのが付加価値額に対する人件費比率を表す労働分配率の低下だ。1990年代末に65%を超えていた労働分配率は減少に転じ、ここ数年は一気に60%を割り込むなど米国の水準すら下回っている。

そこで期待されたのが今回の春闘である。経営側の代表である日本経団連の御手洗冨士夫会長も昨年12月の記者会見で「全体として企業業績がよくなっており、働く人に配分されることはいいことだと思う」と賃上げを容認。また、今年に入り福田康夫首相自ら御手洗会長に異例の賃上げ要請に踏み切るなど期待は一層高まった。

ところが大手製造業の一斉回答日である3月12日。春闘の牽引役であるトヨタ自動車の回答は組合のベア要求額1500円に対し、昨年と同じ3年連続の1000円。自動車生産では初の世界一に輝き、空前の好業績を誇るトヨタの低水準の回答に追随するようにホンダ、マツダが800円、スズキ700円とほぼ前年並みの水準で決着した。唯一満額回答を獲得したのは日産自動車のみである。

電機大手も昨年実績を1000円上回る2000円の要求を掲げて交渉に臨んだが、大半の企業はその半分の1000円と前年同額の水準で決着した。目立ったのは7年ぶりとなる経営再建中の三洋電機の800円の賃上げである。業績格差が著しい電機業界にもかかわらず昨年より100円の上積みさえ許さない“横並び”の一律1000円。しかも三洋と同レベルの低い水準に「景気の先行きに不安を抱く経営側の賃上げへの抵抗は予想以上に強く、断念せざるをえなかった」と労組関係者も嘆く。

確かに今年に入り経済環境は急変した。サブプライムローン問題に端を発した米経済の失速や急速なドル安・円高の進行が賃上げに対する経営側の姿勢を萎縮させたのは事実だろう。御手洗会長も「先行きがかなり厳しい状況のなかで去年並みというのは非常にがんばったと思う」と、昨年末の賃上げ容認を翻す発言に一転した。

※図中(1)賃金体系維持 (2)業績連動算定方式 (3)年収管理型賃金決定方式 (4)単年度431円+移行財源1465円 (5)役割給を1%引き上げ  (6)初任給太字は2年間を単位とした金額。斜体は賃金制度維持分を含む。下線は平均賃金改定額。太字斜体はモデル賃金の改定額。