「PLで野球をしてなかったら、コーチの重要性はわからなかった」
黒木の目下の最大の任務は、優秀なライフプランナーを育てることだが、直接の指導はコーチに任せている。
「PLもコーチ、スタッフの方がとてもよかったんです。野球をしてなかったら、優秀なコーチの重要性はわからなかったかもしれません」
コーチにしっかり責任を与えるので、監督から選手に対して不満もある場合でもぐっとこらえる。コーチが選手をマネジメントして育成するプロセスを見守っている。
ただ、誰でも仕事が惰性になって手を抜く瞬間もある。そんなプランナーが目に止まると、マネジャーを呼ぶ。「あいつ、最近、大丈夫かな。見てあげてくれないか」。
夏の大会の全国制覇には個人の力ではなく、チーム力がものをいう。ビジネスも同じだ。集まる社員たちの転職してきた理由や働く価値観、描いている将来の夢などはそれぞれ。それらの方向性を一致させ指揮を執るのが、監督である自分のミッションだ。
人生のゲーム「6回裏が終わった感じ。残り3イニングが楽しみ」
プルデンシャル生命では支社長は制度上60歳まで。それ以降はまた、営業に戻って80歳まで働けるという。過去に契約した顧客をそのままフォローしていくのが仕事の柱だ。
最近、ふと考えることがある。野球人生を辞め、あのまま銀行にい続け、そのレールに乗っていたら、終着駅は見えていただろうと。だが、今の仕事のレールに終点がない。歳下にもすごく頑張る社員がいて、勉強させられる。
支社長となって多くの部下を束ねている今、KKと肩を並べる位置に立てただろうか。
「どうですかね。桑田はここ4、5年で対等に接してくれるようになったかな。こちらから食事に誘えるようになったし、ゴルフも行ってます。口には出さないけど、認められてきたかなと。僕も桑田も清原も、人生、順風満帆かというとそうじゃない。失敗、つらい思いと紆余曲折があるからこそ人生は面白いんです」
しみじみという。
「人生の節目でいろんな人に導いてもらってきました。つらいこともありましたが、そういう時は何年か経って笑い話になっている、と前向きに考えること。人生80歳と考えれば、今は6回裏が終わった感じ。ここからの3イニング。自分に何が起こるかワクワクしています。物事への貪欲さは野球をやっていて備わったんでしょうね。僕は、王道を歩きたい。陰じゃなくて、おてんとさんの下を」
人生というゲームの前半戦では、野球という武器で大量の得点をあげた。だが、その後、手痛い失点を喫し、中盤戦では、戦いの場を変え、外資系金融の熾烈な世界でV字回復……。まだ54歳。時間はある。逆転サヨナラ勝ちだったとして、それはどんな結末だろうか(文中敬称略)。