レコメンドウィジェット会社は行政処分を受けない

薬機法にはさまざまな役割があるが、広告業界の視点から見た薬機法は簡単に言えば「健康に関する商品について、広告ルールを定めている法律」だ。化粧品、医薬部外品、医薬品、医療機器、健康食品、サプリメントなどの広告に対して、さまざまなルールを課している。

薬機法のルールのひとつに「何人規制なんぴときせい」と呼ばれているものがある。薬機法違反の広告があった場合、その広告に関係した事業者を、立場を問わず処分できる、というルールだ。

レコメンドウィジェット運営会社が薬機法違反のウェブサイトにリンクを提供していた場合は、薬機法に違反していることになる。行政処分を下すことも、法解釈上は可能だ。

ところが実際には、その処分は行われない。薬機法の実運用では、行政処分されるのは商品のメーカーだけだからだ。レコメンドウィジェット運営会社は違法の疑いがある広告を大量に表示させているが、少なくとも行政から表立って逮捕されたり指導されたりした例はない。

なお、薬機法は先月8月に改正され、課徴金制度がスタートした。罰金のようなものだ。一方で、広告の違法性についての判断基準に変更はない。法運用が変わる可能性はあるが、その行方は筆者も含め民間の事業者にはわからない。

行政処分を下すための議論が始まる可能性はある

景品表示法は、ごく簡単に言えば「広告で嘘をついたら罰する」という法律だ。消費者庁が管轄している。

消費者庁は、消費者の被害を防ぐことが主業務なので、違法行為をしている事業者の摘発に積極的だ。

しかし、景品表示法で処分されるのは商品のメーカーと販売者のみだ。レコメンドウィジェット運営会社は景品表示法違反の疑いがある広告を表示しているが、景品表示法違反に問うことは、かなり難しそうだ。

一方、消費者庁は今年6月から「アフィリエイト広告等に関する検討会」を開始した。その資料のなかに、図表2のような記述がある。

【図表2】供給主体性に関する参考資料 ※蛍光ペンの線は筆者加筆(出所=アフィリエイト広告をめぐる現状と論点・P13)

これは、2020年3月27日の閣議決定を引用したものだ。「景品表示法の規制対象を広告事業者にも広げるべきではないか(著者意訳)」との質問に対し、「現在の景品表示法でも広告事業者を行政処分できる(著者意訳)」との回答が出ている。

この閣議決定を今回の検討会資料に載せたということは、この点も含め、景品表示法の運用方針を議論していくのだろう。