ポルシェBEV成功要因②:テスラの成功

第2の成功要因として考えられるのは、テスラの爆発的増加という外部要因である。近年テスラはアメリカで最もステータス性の高い(=自慢できる)ブランドとして君臨しており、テスラ・モデルSはラージ・ラグジュアリー・カーという最上位セグメントで最も売れる車種となっている。

しかしここ数年アメリカにおけるテスラの販売は、ミドルクラスのモデル3とモデルYにシフトしており、テスラの販売は今年上半期だけで14万台に達している(モデル3発売前の2017年は年計で5万台程度)。

モデルSはセグメントトップの地位は維持しているものの、アメリカでの販売は大きく低下している(2018年の3分1の水準)。つまり、今やテスラのブランドイメージの中核はモデル3とモデルYであり、ステータスイメージは低下していると考えられるのだ。

この絶妙なタイミングで投入されたのがタイカンだった。それゆえか、ポルシェオーナー以外で最もタイカンに興味を持っているのはテスラユーザーだという。

資料⑤ Porsche attracting Tesla owners with all-electric Taycan sports car

写真=Porsche-AG
ポルシェ タイカン
テスラユーザーがよりステータス性の高いポルシェへ移行

ありふれてきたテスラから、よりステータス性の高いポルシェに乗り換えようとするモデルSユーザーがたくさんいるということだ。このことは販売にも表れており、前述のように2021年上半期のアメリカのタイカンの販売台数はモデルSを越えている。

テスラにはスーパーチャージャーという独自の急速充電ネットワークがあり、ソフトの更新もOTA(Over The Air=無線経由)でできるなど、ポルシェにはない実用上のアドバンテージがあり、加速性能や航続距離もポルシェより優れているにもかかわらず、である。

まだ現時点でBEVを買うということは、実用価値ではなく、社会的ステータスや自己表現手段としての側面が強いということも示している事例だろう。

ポルシェBEV成功要因③:価格設定

第3の成功要因はタイカンの価格設定にある。ポルシェ911は10万1200ドル(アメリカでの価格)が最低価格だが、タイカンは8万2700ドルから買える。なんと2万ドル近く安いのである。

911のベースモデルよりも加速性能に優れるタイカン4Sでも、10万3800ドルとほぼ同等の価格である。タイカンで最も高性能なタイカン・ターボSの時速0-60マイル(約96km/h)加速は2.6秒と、911の中で最も速い911ターボSと同タイムだが、この2台の比較でもタイカンのほうが2万ドル以上安い。

ライバルとの比較でも、テスラ・モデルSの価格は8万9990ドルからでタイカンのほうが安い。つまり、ポルシェのBEVに関心を持つ層にとって、割安感を感じさせる価格設定となっているのである。