危機を前にしても「しっかり検証」「幅広く検討」

感染対策にあたって、菅首相はこれまで、ロックダウン(都市封鎖)は日本になじまない、と発言してきた。17日の会見でも、ロックダウンをできるように法整備する可能性、必要性はないのかと聞かれた菅首相はこう答えた。

「諸外国のロックダウンについて、感染対策の決め手とはならず、結果的には各国ともワクチン接種を進めることで日常を取り戻してきているというふうに理解しています」

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これまでのワクチン「一本足打法」とも言うべき、ワクチン頼みの姿勢を繰り返したのだ。ただ、その上で、こうも付け加えた。

「新型コロナというこの非常事態について、今後、しっかり検証して、感染症に対するための法整備、こうしたことも含めて幅広く検討しなければならない、私はこのように思っています」

面前に危機が迫っている中で、まだ「しっかり検証」「幅広く検討」と役所の答弁のようなことを言っているのだ。緊急事態に対応するための法整備の必要性については2020年秋の臨時国会の時から指摘されてきたが、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」や「感染症法」の改正に着手したのは2021年の通常国会から。しかもその改正では知事の権限などが不十分だという指摘は根強くあった。例えば、都道府県が医療機関に対して新型コロナの患者を受け入れるように要請や勧告を行うことができるようになったが、「命令」ではなく、しかも、従わない場合でも病院名の公開だけという甘い規定にとどまった。

菅首相も会見で「現実問題としてはこうした規定があまり使われずに、自治体からの事実上の要請に基づく病床の確保にとどまっております」と法改正が効果を発揮していないことを認めていた。

ロックダウンの法整備は準備されないまま

ロックダウンに至っては、法整備はまったく着手されておらず、国会も閉じられているので、議論すらされていない。なぜ、最悪の事態を想定して法改正など準備をしておくことができないのだろうか。

ロックダウンをした場合、経済への打撃が大きいということもあるのだろう。だが、ロックダウンもせず、自粛が守られない緊急事態宣言を長期にわたって出し続けることの方が、経済への打撃は大きい。ニュージーランドのように、感染者が数人確認されただけで、ロックダウンを行い、短期間でウイルスの撲滅を狙う方が、経済活動を止める期間を結果的に短くできる。日本はデルタ株が国内に入ってきた今年4月から5月にかけて、「水際対策」で失敗を犯し、感染の広がりを止めることができなかったことが今の感染爆発につながっている。