2030年以降も再エネ賦課金は上がる恐れも

そうなると気になるのが、ピークを越えた2030年以降の賦課金だ。政府の元々の試算では、2030年ごろをピークに再エネ賦課金が下がる想定だ。

しかし、いまは制度が設計された当時と前提が異なっており、完全な脱炭素時代に突入をしている。2050年カーボンニュートラルに向けては再エネの大幅導入なくして達成は難しく、現在素案が発表されているエネルギー基本計画でも2030年に向けて再エネを大幅に増やすことが盛り込まれている。

2014年度から洋上風力発電プロジェクトの電力に対する固定価格買取制度が始まった。この構図は太陽光の初期と同じであり、コストの低減が図られるまでは参入を促進するため、買取単価を高く設定をせざるを得ない。2021年度の単価はいずれも30円を超えている。

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これらの再エネの導入が進んだ場合、再エネ賦課金の上昇要因となる。つまり、元々予定されていた2030年以降の負担金の低減のスピードを上回る速度で新規の再エネ導入の負担増が生じた場合、2030年以降も継続して再エネ賦課金は上昇する恐れがある。

太陽光の発電コストは劇的に低下しているが……

賦課金は2030年までは確実に上がり、少なからず家計を圧迫することは確かだ。

しかし近年、太陽光の発電コストは劇的な低下し、世界の発電コストの平均は10年間で5分の1以下となった。まさに太陽光発電は「安価な電力源」へと成長を遂げた。

経済産業省は、このほど2030年の電源別発電コスト試算の結果を公表した

これによると、太陽光の発電コストは事業用で8円台前半~11円台後半(円/kWh)、住宅用で9円台後半~14円台前半。対して、既存の原子力は11円台後半~、LNG火力は10円台後半~14円台前半、石炭火力は13円台後半~22円台前半と、太陽光発電の優位性を裏付ける結果となった。

太陽光発電のコスト自体は今後も下がると見込まれており、家計の電気代を押し下げる効果が期待できる。しかし、これまで述べてきたように年々上がり続ける再エネ賦課金を利用明細で目にするたび、利用者は再エネに対する不信感を募らせるだろう。

再エネ賦課金の制度が致命的な欠陥を抱えているとしたら、まさにこの点である。

最大の問題は“ブラックボックス化した電気料金”

そもそもの問題をたどれば、電力料金がブラックボックス化していることにたどり着く。

インフラ建設には初期投資が必ずかかるものであり、それは何も再エネだけではなく、これまでも電気代に転嫁されてきた。にもかかわらず再エネだけ賦課金という形で負担金が明記され、火力や原子力のコスト分はひっそりと電気代に上乗せされている。