“高価買取”の功罪……制度が生み出したひずみ
再エネ参入事業者の利益が保証されたため生じたひずみがある。
国産の太陽光パネル生産が好例だろう。2000年代中盤には世界シェア4割超で世界1位に君臨していたが、今では1%台まで落ち込んでいる。コスト削減の企業努力が進まなくなった結果、メーカーも含めてイノベーションが起きにくい土壌となってしまった。
脱炭素時代の本格到来となったこの2020年代において、世界に誇った“日の丸ソーラー”は世界でまったく勝負できないセクターとなってしまった。
再エネのために豊かな自然が犠牲になるという本末転倒な現象も生じた。山林を切り崩して大規模な太陽光発電施設を造成する事例あった。高価格での買取保証ゆえに、それでも事業者は利益が期待できたからだ。
地元との軋轢を生むケースが出てきたのも、固定価格買取制度が始まった当初の特色と言えよう。
買取価格は下がっても、賦課金は2030年まで上がる
導入当初の買取価格こそ高いものの、価格は年々緩やかに下げる制度設計になっている。事実、先ほど紹介したように初年度(2012年度)は40円だった産業用太陽光の買取価格は、今年度第1四半期は11円が上限になっている。
もちろん気象などの自然条件に発電が左右される特性はあるものの、発電コストだけで見れば、この買取価格はすでに他の電源と同等程度、あるいは安い水準になっている。
再エネ業界も徐々に淘汰が進展し、まっとうな経営をしている筋肉質な企業が生き残る格好になってきている。また、大規模造成を伴う発電所開発は採算がとれにくくなり、各種問題はようやく是正されつつある。
だが、それとは逆に、電気の利用者が負担する賦課金は当面上がり続ける。制度上2030年までは上がり続けるのだ。
その理由を簡潔に言えば、再エネの導入時のコスト負担を、将来に先送りにする設計にしたためだ。
固定買取制度の下では、産業用の発電では20年間の買取が約束されている。したがって、初年度1kWhあたり40円という高い価格設定で政府が買取保証した分、利用者の負担は20年間続くことになっている。
そして、毎年の負担分が上乗せされていく。その間、いくら再エネの発電コストが安くなろうが、導入された再エネの量が増えれば増えるほど、この再エネ賦課金は増え続けることになる。それは制度上、そのように設計されているので当然の帰結である。電力中央研究所によれば、2030年時点で1kWhあたり最大4.1円になるという。