福祉事務所職員も「弊害」「ストレス」「必要ない」
福祉事務所の現役の職員や元職員からも体験談が送られてきた。ここでは、近畿地方の市役所で働く職員の声を紹介したい。
他にも、「扶養照会は弊害の方が大きいことが明らか」(現役職員)、「私たちも必要のない業務にはうんざりです。ご家族へのいわれなき軋轢、決定的に絆を断ち切るかもしれない業務は法の目的に反しています」(現役職員)、「申請抑制のための壮大な無駄です」(元職員)といった声が寄せられた。
これらの体験談を読んでいただくと、どの立場の「当事者」にとってもマイナスにしかならない扶養照会の実態がよくわかるであろう。私はこの仕組みを「三方良し」ならぬ「三方悪し」と形容したい。
実際に援助につながったのはわずか1.45%
各方面に心理的な負担や実害をかけながらも、扶養照会によって金銭的な援助に結びつくケースは極めて少ないことも明らかになっている。
厚生労働省が2017年8月に実施した扶養調査状況調査によると、この月に全国で実施された扶養調査件数3万8220件のうち、金銭的援助に結びついたのは554件にとどまっている。その割合は、1.45%だ。
大都市部では特にその割合は低く、東京都中野区では2019年度の新規申請世帯数729件のうち186件に扶養照会を実施したが、金銭的援助につながった方は1件のみ(照会件数の0.5%)であった。中野区などの大都市部では、作業効率を踏まえて照会する件数を絞る傾向にあるが、それでもこの割合である。
元職員の方による「申請抑制のための壮大な無駄」という指摘は、まさにその通りであろう。