結婚と幸福度の関係は、時代の変化とともにどのように変化してきたのでしょうか。人々の幸福度について研究する拓殖大学の佐藤一磨准教授は「かつての皆婚社会では、未婚状態がよりつらくなる『未婚ペナルティ』が発生していた可能性がある」と指摘します――。
挙式したばかりの新郎新婦
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです

結婚している人ほど幸福度が高い

結婚と聞くと、読者の皆さんはどのようなイメージをもたれるでしょうか。多くの場合、結婚に対して肯定的なイメージを持つことが多いのではないかと思います。

結婚は愛する相手と結ばれ、新たな家族をつくっていくプロセスであり、必然的に幸せと深い関係があるためです。

この点に関して数多くの学術的な研究があり、それらの研究結果は「結婚している人の方が未婚の人よりも幸福度が高い」という結論を得ています(※1)(ただし、これは結婚の有無のみを見た場合の結果であり、夫婦関係の良しあしを考慮すると、また別の結果が出てきます。詳細は「『未婚より既婚女性のほうが幸せのウソ』既婚女性に広がる幸福度格差」をご参照ください)。

※1:筒井義郎(2018)結婚と幸福:サーベイ, Discussion Papers In Economics And Business, Discussion Paper 18-01.

日本は脱皆婚社会に

このように大枠で考えた場合、結婚と幸福度の間にはプラスの関係があるわけですが、今回は、社会環境が結婚と幸福度の関係に与える影響について紹介します。

日本ではかつて社会の大半の人々が結婚する「皆婚社会」が成立していました。

総務省統計局の「国勢調査報告」で具体的な数値で見ていくと、男女とも1920年から1990年まで50歳時点での未婚率が5%前後でした。この結果は、残りの95%近い人々が離婚や死別といった結果に終わる場合はあれど、結婚を経験したことを意味しています。

近年では未婚率が徐々に上昇しており、2015年では男性で約23%、女性で約14%が50歳時点で未婚となっています。これらの数値を見る限り、日本は既に「皆婚社会」ではないと言えるでしょう。

このように日本は「みんなが結婚する社会」から抜け出してきていますが、社会環境が「みんなが結婚する社会」から「結婚しない人も一定数いる社会」へと変わる中において、結婚が幸福度に及ぼす影響に変化はあったのでしょうか。