田村厚労相が初めて運用見直しに言及

扶養照会の見直しを求める声に押され、田村憲久厚生労働大臣は、2021年2月4日の衆議院予算委員会で初めて見直しについて言及した。

具体的には、厚生労働省が自治体への通知で親族に照会しないケースとして「20年以上、音信不通である」という例をあげていることに関して、「20年以上、音信不通で家族関係が壊れている場合は照会しないことになっているが、20年にこだわる必要はないのではないか。今より弾力的に運用できるように努力していきたい」と答弁したのである。

内容的には不充分だが、厚生労働大臣がこの問題で初めて運用の見直しに言及したのは、この間のキャンペーンの成果だと言える。

菅首相も8日の衆院予算委員会で扶養照会に言及し、「より弾力的に運用できるよう、今厚生労働省で検討している」と答弁した。

ただ、「弾力的運用」では問題は解決しない。私たちはあくまで扶養照会の運用を抜本的に見直し、「本人の承諾なしで、福祉事務所が勝手に親族に連絡をすることをやめる」という新たな原則を確立することを求めている。

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親族に連絡するかの判断権が役所にある問題点

厚生労働省は、私たちからの要望に応える形で、昨年12月下旬から公式サイト上で「生活保護の申請は国民の権利です」という広報を開始した。

しかし、私は扶養照会の仕組みを変えなければ、生活保護の利用を権利として確立することはできないと考えている。本人が嫌だと言っているにもかかわらず、福祉事務所が親族に問い合わせをしてしまうのは、プライバシーに関する自己決定権を放棄しろ、と言っているのに等しいからだ。それは制度を必要としている人の尊厳を傷つける行為に他ならない。

2月26日、厚生労働省は扶養照会の運用を一部見直す通知を発出した。この通知により、DVや虐待のある場合は親族に連絡をしないということが明確になり、「一定期間(たとえば十年程度)、音信不通が続いている」、「親族から借金を重ねている」等の事情がある場合も扶養照会を行わなくてよいということになった。

この見直しは照会の範囲を今まで以上に限定するものであったが、私たちが求めてきた「本人の意思の尊重」という点では不充分であった。個々の親族に連絡をするかどうかは、あくまで役所が一方的に判断する、と読める内容だったのである。小手先の変更ではなく、扶養照会の抜本的見直しを求めていきたい。